研究実績の概要 |
本研究の目的は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV) 感染ランゲルハンス細胞(LC)の免疫学的機能を調べ、HIV 感染LCがHIV 感染患者の免疫機能に与える影響を検討することにある。 有償ボランティアからの採血検体を7日間培養して作製した、ヒト表皮LCの特徴を有するヒト単球由来LC様樹状細胞を用いて、現在までに以下の結果を得ている。 1, HIV非感染LCに比べHIV感染LCのIndoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)、PD-L1、PD-L2、IL-10、TGF-βなどの免疫抑制分子の発現は有意差を認めなかった。2, HIV非感染LCに比べHIV感染LCによるnaive CD4+T細胞からのnaive Treg細胞誘導能は有意差は認めなかったが、HIV感染LCによるnaive CD4+T細胞からのeffector Treg細胞の誘導能は有意に減少した。3, allo mixed lymphocyte reaction (MLR)を行い、誘導されるTreg細胞の抑制機能を検討したところ、HIV感染LCにより誘導されるTreg細胞の抑制機能は、HIV非感染LCにより誘導されるTreg細胞の抑制機能と比べ有意差は認めなかった。4, HLA-A*0201陽性有償ボランティアからのヒト単球由来LC様樹状細胞とnaive CD8+T細胞を用いた実験において、HIV感染LCはnaive CD8+T細胞からHIVgag特異的CD8+T細胞を誘導することができた。さらに誘導されるHIVgag特異的CD8+T細胞はIFNγ産生能を有していた。
以上の結果は、HIV感染において、LCはeffector Treg細胞の誘導を減少させ、HIVgag特異的CD8+T細胞を誘導することで、抗HIV特異的免疫応答を高め、後天性免疫不全症候群の発症を遅延させている可能性が示唆された。
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