本研究の目的は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染ランゲルハンス細胞(LC)の免疫学的機能を調べ、HIV感染LCがHIV感染患者の免疫機能に与える影響を検討することにある。
最終年度に実施した研究の成果として、HLA-A*0201陽性有償ボランティアから採取した表皮シートにex vivoでHIV BaLを曝露後、3日後に表皮シートから培養液に遊走し回収したLCを、同一のボランティアからのnaive CD8+ T細胞と1週間共培養後、さらに1週間HIVgag抗原で刺激したところ、HIV感染表皮LCはHIVgag特異的CD8+ T細胞を誘導することができた。さらに、誘導されるHIVgag特異的CD8+ T細胞はIFN-γ産生能を有していた。 一方で、有償ボランティアから採取した表皮シートにex vivoでHIV BaLを曝露後、3日後に表皮シートから培養液に遊走し回収したLCを、同一のボランティアからのnaive CD4+ T細胞と6日間共培養したところ、HIV非感染表皮LCと比較しHIV感染表皮LCによるnaive 制御性T細胞(Treg細胞)誘導能は有意差はなかったが、HIV感染表皮LCによるeffector Treg細胞の誘導能は有意に減少した。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果として、HIV感染LCはIFN-γ産生能を有するHIVgag特異的CD8+ T細胞を誘導し、一方HIV感染LCは細胞増殖抑制能を有するeffector Treg細胞の誘導能が低下した。 LCは初期HIV感染細胞の一つとして重要であるばかりでなく、HIV感染LCはHIV抗原特異的CD8+ T細胞を誘導し、さらにeffector Treg細胞の誘導を減少させることでHIV特異的免疫応答を高め、後天性免疫不全症候群の発症を遅延させている可能性が示唆された。
|