研究課題/領域番号 |
26860881
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
楊 伶俐 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (40711784)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | オートファジー / メラニン / 皮膚 |
研究実績の概要 |
1)ヒト表皮正常メラノサイト(NHEM)を用いて、オートファジー関連因子をRNA干渉法よりノックダウンし、Atg8(LC-3)とp62などで細胞免疫蛍光染色し、共焦点レーザー顕微鏡による発現の変動を確認した、ウエスタンブロット、更に電子顕微鏡によるオートファゴゾームの形成を観察して確認した。同時に、メラニン産生関連遺伝子の発現パターン、メラノソームの形成も同様に検討した。オートファジー関連因子をノックダウンした培養メラノサイトで、メラニン合成の低下が観察された、これらの結果より、オートファジー機構がメラノサイトのメラノソーム形成、成熟に関与していると考えられる。 2)ヒト表皮正常ケラチノサイト(NHEK)を用いて、培養メラノサイトから抽出、精製したメラノソームを添加し、メラノソームを貪食したNHEKにオートファジー関連因子をsiRNA によりノックダウンし、同様にオートファジー関連遺伝子発現、オートファゴソーム形成の変動を検討した。更に、NHEK細胞内メラニン含有量の変化も定性的に測定した。in vitro実験系でケラチノサイト内で、リソソーム関連オートファゴソームがメラノソームの分解に寄与することが証明された、ケラチノサイトでのオートファジーがメラノソームの分解に関与していると考えられる。 3)NHEM とNHEKの共培養モデルを確立した、オートファジー抑制剤、促進剤の投与で、メラニン産生量、細胞間メラノソーム転送機構への影響を解析した。細胞単培養、共培養を比べることによって、オートファジー機構の役割をさらに明らかになってきた。 4)Atg5をメラノサイトで特異的にノックアウトマウス:MITF-Cre; Atg5 flox/floxマウスの作成、ケラチノサイト特異的オートファジー欠損マウス:K5-Cre; Atg5 flox/floxマウスの作成をスタートした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
MITF-Creマウスの作製が少し時間かかって遅れたため。
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今後の研究の推進方策 |
作成できたMITF-Cre; Atg5 flox/floxマウス、K5-Cre; Atg5 flox/floxマウスについて:マウスの皮膚の表現型を検討するため、皮膚組織を単離し、メラノサイト、毛根メラノサイト、ケラチノサイトなどの異常を観察する。免疫組織化学法、電子顕微鏡や生化学的手法を用いてオートファゴソーム、メラノソームを検出し、その分布やメラニン産生量を比較する。マウスの皮膚組織を用いて、メラニン合成に関する重要な因子の発現を調べる、遺伝子発現パターンの変化について解析する。マウスの皮膚からマウス表皮メラノサイト、マウス表皮ケラチノサイトを樹立し、培養系でオートファジーとメラノソームの関係を検討する。マウスの背部を剃毛後、UVBを500 mJ/cm2照射、照射後24、48時間での皮膚生検を行う。野生型マウスと比べ、皮膚全体にメラノソームの数、分布、動態やメラニン産生能を形態学的に調べ、類似点および相違点を形態学的に明らかにする。 三次元培養ヒト皮膚モデルを用いて、上記のIn vitro, in vivo, ex vivo実験から得られた所見を再検証することで、オートファジーとメラノソームの合成分解機構との関連を明らかにする。 オートファジーの生理機構のみならず、皮膚色素異常疾患全般におけるオートファジーの機能を明らかにすることを新な目的として、各種皮膚色素異常疾患の臨床検体を用いて検討する。当研究室にメラノーマ、尋常性白斑、結節性硬化症白斑、伊藤白斑の凍結組織、凍結ブロック、パラフィンブロックが保存されている、患者皮膚由来の繊維芽細胞、メラノサイト、ケラチノサイトも樹立されている。組織切片を免疫染色で、樹立した細胞を培養系でオートファジー関連因子を検討し、オートファジーと色素異常疾患の関連性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度、マウス作成が遅れたため、マウス飼育、維持費とマウス関連実験消耗品などが予算より少なかったです。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に遅れたマウス実験に、マウス飼育、維持費とマウス関連実験消耗品などに予算を入れる予定です。
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