研究課題/領域番号 |
26860882
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
森桶 聡 広島大学, 大学病院, 病院助教 (40536679)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 蕁麻疹 / 血液凝固 / Tissue Factor |
研究実績の概要 |
本研究では慢性蕁麻疹病態における、好塩基球活性化によるTissue Factor (TF)の発現と凝固系の駆動に関する検討を行うため、血管内での好塩基球の活性化から血液凝固系が活性化され実際に蕁麻疹を生じるまでを、好塩基球活性化によるヒト皮膚血管内皮細胞でのTF発現の誘導、好塩基球活性化によるTFの発現誘導と凝固系の駆動、活性化した凝固因子によって肥満細胞が活性されるかどうかの検討、と順を追ってそれぞれのメカニズムを解明し、好塩基球活性化が血液凝固系の活性化をもたらし、ひいては蕁麻疹を発生させうる機序について検討する。今年度は、まず好塩基球活性化によるヒト皮膚由来血管内皮細胞でのTF発現の検討を行った。その結果、mRNA、膜発現レベルにおいてヒスタミンとlipopolysaccharide(LPS)が相乗的に血管内皮細胞(Huvec)のTF発現を増強していることがわかった。また、ヒト正常皮膚微小血管内皮細胞(DMEC)でも同様の結果が得られた。さらに、阻害薬を用いた検討ではこの反応がヒスタミンH1受容体とtoll like receptor 4(TLR4)受容体を介して生じ、各受容体の下流にあるプロテインキナーゼC(PKC)とNFκBの作用が重要であることを見出した。また、ヒト末梢血由来好塩基球と血管内皮細胞を共培養して好塩基球を活性化させると、血管内皮細胞にTF発現がみられた。このTF発現は、H1受容体拮抗薬を加えると抑制された。なお、血管内皮細胞に発現したTFは血液凝固外因系を駆動し、活性化第Ⅶ、Ⅹ因子、および活性化トロンビンを生成することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ申請時の計画どおりに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
血管内皮細胞の細胞外にTFが発現し凝固反応が開始されると、活性化した第Ⅹ因子、トロンビン、フィブリンなどが産生され、これらの凝固因子はprotease-activated receptor(PAR)を活性化すると考えられる。皮膚の肥満細胞にはPAR1~4の発現があり、TF発現で産生された凝固因子は肥満細胞上のPARに結合してこれを活性化すると考えられている。そこで、好塩基球により活性化されTFを発現した単球が血管外に移行するかどうか、また血管内で生じた活性化凝固因子は血管外に移行するかどうかを検討する。ヒト皮膚由来肥満細胞におけるPARの発現を、mRNA発現量、タンパク発現量、膜発現量をRT-PCR、ウエスタンブロット、フローサイトメトリーによって確認する。ヒト皮膚由来肥満細胞でPARの発現を確認し、活性化された凝固因子が肥満細胞を活性化すると仮定し、ヒト皮膚切片から単離した肥満細胞(human primary mast cell: HPMC)を用いてそれら凝固因子がHPMCを活性化するかどうか、またそのために必要な条件を検討する。また、それら活性化した凝固因子がPAR1~4のいずれに作用するのかを検討する。
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