本研究では、慢性蕁麻疹の病態における好塩基球活性化によるTissue Factor (TF)の発現と血液凝固系の駆動に関する検討をおこなうため、血管内での好塩基球の活性化から血液凝固系が活性化され実際に蕁麻疹を生じるまでを、好塩基球活性化によるヒト皮膚血管内皮細胞でのTF発現の誘導、好塩基球活性化によるTFの発現誘導と凝固系の駆動、活性化した凝固因子によって肥満細胞が活性化されるかどうかの検討、と順を追ってそれぞれのメカニズムを解明し、好塩基球活性化が血液凝固系の活性化をもたらし、ひいては蕁麻疹を発生させうる機序について検討することを目的としている。今年度は、単球および血管内皮細胞に発現したTFが血漿成分の血管外漏出に寄与するかどうか検討した。単球はlipopolysaccharide(LPS)等のToll like receptor(TLR)リガンドによりTFの発現を増加され、また、血管内皮細胞はLPSとヒスタミンによって相乗的にTFの発現が増加される。これらの細胞に発現したTFが、外因系凝固反応を駆動し、その結果、血管透過性亢進が誘導されるかどうかを、血管内皮細胞の蛍光染色解析、及び細胞の接着状態を無標識、リアルタイムにモニタリングできるインピーダンス法によって評価した。その結果、LPS、あるいはヒスタミン等の刺激により発現した単球・血管内皮細胞上のTFは、強く外因系血液凝固反応を駆動し、さらに、血液凝固反応によって産生された活性化血液凝固因子が血管内皮細胞上のProtease activated receptor 1(PAR1)を介して血管透過性を亢進させ、血漿成分の漏出、つまりは蕁麻疹の発現に寄与する可能性を明らかにした。
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