研究課題/領域番号 |
26860883
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
白石 研 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (80710863)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | メラノーマ / 癌幹細胞 / ニッチ / 内皮細胞 |
研究実績の概要 |
我々は以前に乳癌幹細胞を用いて、血管・リンパ管内皮細胞との共培養システムを確立し、内皮細胞が乳癌幹細胞の遊走能、増殖能、自己複製能をサポートすることを明らかにした。さらに、内皮細胞のコンディションメディウム中のいかなる物質が癌幹細胞をサポートするのか遺伝子発現の比較によるスクリーニングを行い、ある特定の因子を同定した。今回は、同様のシステムを用いて、メラノーマ幹細胞をサポートする内皮細胞由来の因子の同定を試みた。まず、前回と同じ共培養システムを用いて、メラノーマ幹細胞でも同様に、リンパ管内皮細胞がメラノーマ幹細胞の自己複製能を強力にサポートすることが分かった。そして、メラノーマ幹細胞と内皮細胞との共培養を用いたスクリーニングの結果、乳癌幹細胞で同定された特定因子と同じ物質(分泌因子)がメラノーマ幹細胞でも同様に発現が増強することが分かった。同因子のリコンビナント蛋白を実際にメラノーマ幹細胞の培地に添加すると、sphere形成能、遊走能、増殖能が有意に促進させた。また、同因子のレセプターの中和抗体を添加して、同因子の働きをブロックすると、メラノーマ幹細胞の自己複製能が著しく抑制されることをsphere formation assayで明らかにした。以上の結果から、メラノーマ幹細胞を制御する内皮細胞由来の特定因子が同定され、同因子の阻害剤やレセプター阻害剤が化学療法抵抗性のメラノーマに対する新たな治療選択肢となり得る可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リンパ管内皮細胞とメラノーマ幹細胞の共培養アッセイより、メラノーマ幹細胞は内皮細胞から分泌される物質によって、その増殖や自己複製能、遊走能が促進されることが分かった。また、我々が独自で行った共培養と定量PCRによる遺伝子発現スクリーニングによって、ある分泌因子が候補に挙がり、同因子のリコンビナント蛋白がメラノーマ幹細胞の増殖能、遊走能、自己複製能を実際に促進させることを明らかにした。同因子のレセプター中和抗体を用いて、同因子の働きを阻害すると、メラノーマ幹細胞の自己複製能が有意に抑制された。以上の結果が本年度中に明らかとなり、本研究の達成度はおおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今回明らかとなった培養細胞(in vitro)での結果がマウスを用いたin vivoでも同様に見られるかどうかを今後明らかにしていく予定である。具体的には、同因子のレセプターをターゲットにしたshRNAをレンチウィルスを用いてメラノーマ幹細胞に導入し、stableに同因子のレセプターをノックダウンした幹細胞を作成する予定である。この細胞とコントロールの細胞を同じ数、NOD/SCIDマウスの皮下に注射し、実際に腫瘍形成能力が抑制されるかどうか。そして、腫瘍の浸潤能や転移能力も抑制されるかどうかを調べる。両者に明らかな差が見られれば、同因子に対するインヒビターの開発を学外の組織と協力して推進させ、実際にヒトに対して応用可能かどうか、副作用等を十分検討した上で、治験が可能な方向にプロジェクトを進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
まず大きな理由の一つは、学会での成果発表が本年度は国内での発表のみであり、海外での発表・情報収集を予定して計画した費用を大幅に下回ったことが挙げられる。また、物品費については、すでに独自で確立したシステムを使って行ったために、必要最小限の試薬等の注文でまかなえたことが挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度はマウスなどの動物飼育費や国外での学会発表を予定しており、本年度以上の費用がかかることが予測される。
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