研究課題
昨年度に、我々は共培養システムを用いて、内皮細胞のメラノーマ幹細胞に対する影響を調べた結果、リンパ管内皮細胞がメラノーマ幹細胞の自己複製能を強力にサポートすることを明らかにした。また、124個の遺伝子プライマーを用いて共培養による遺伝子発現プロファイリングを行った結果、メラノーマ幹細胞と共培養することで、リンパ管内皮細胞におけるCXCL9、10、11の発現が著しく亢進することが分かった。実際に、リコンビナントのCXCL10、CXCL11蛋白をメラノーマ幹細胞の培地に添加してsphere formation assayを行うと、両者ともにメラノーマ幹細胞の自己複製能を有意に亢進させ、また、CXCL9、CXCL10、CXCL11のレセプターであるCXCR3の中和抗体を用いて、sphere formation assayを行うと、メラノーマ幹細胞の自己複製能が著しく抑制することを明らかにした。次に、メラノーマ幹細胞におけるCXCR3の発現をreal time RT-PCRで調べた結果、メラノーマ幹細胞(sphere)におけるCXCR3の発現は、通常の接着培養時(adherent)と比較して明らかに増強していることが分かった。更に、メラノーマの組織におけるCXCR3の発現をCXCR3抗体を用いて免疫組織学的に検討した結果、メラノーマではCXCR3が強発現しており、その染色は一部の細胞集団でより強く認められた。その後、我々はCXCR3をstableにノックダウンしたメラノーマ幹細胞を作成した。同細胞をNOD/SCIDマウスの皮下に注射し、形成される腫瘍の形成能をや転移能の抑制効果を現在も検討中である。本研究により、リンパ管内皮細胞から分泌されるCXCL10、CXCL11が、CXCR3を介してメラノーマ幹細胞の自己複製能を強力にサポートすることが少なくともvitroの実験で明らかとなった。CXCR3の阻害剤が化学療法抵抗性のメラノーマに対する新たな治療選択肢になりうる可能性が示唆された。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
The Journal of Cell Biology(JCB)
巻: 209 ページ: 305 315