メルケル細胞癌は 原発性皮膚癌のなかでも最も予後不良なものの一つであり、その年間発生数は急速に増加している。その大部分の発症にメルケル細胞ポリオーマウイルス(MCPyV)が関与しているとされるが、その細胞動態にはまだ不明な点が多い。さらに現在、本邦において転移性・再発性メルケル細胞癌に対して保険適用となる抗癌剤も存在せず、その予後の悪さもあり治療のさらなる発展が期待されている。今回、MCPyV陽性、陰性それぞれ複数種のメルケル細胞癌細胞株を用いて気相-液相界面培養系を用いてコラーゲンゲル中で培養した。単独培養で通常2週間以上生存維持させることができるが、有棘細胞癌細胞株と混合培養することによりMCPyV陽性のメルケル細胞癌細胞癌は形態学的に変性/壊死が目立つようになり、その生存・増殖能は低下、アポトーシスは増加した。これらの変化はMCPyV陰性メルケル細胞癌細胞株では確認できず、MCPyV陽性と陰性とでその細胞動態に明らかな差を認めた。また逆に有棘細胞癌細胞も、MCPyV陽性メルケル細胞癌との混合培養で生存・増殖能が低下した。この相互関係をきたす明らかな仲介因子の特定には至っておらず、これら2種の癌細胞が直接接触する環境そのものが影響している可能性がある。 今回確立した培養法は種々の解析に有用であり、今後有棘細胞癌との混合培養以外にもさらにメルケル細胞癌細胞の培養条件を検討し、その制御機構に関与する因子を同定することで、治療のさらなる発展が期待出来る。
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