研究実績の概要 |
平成27年度の研究成果を以下に示す. ⅰ) HSV-1を感染させたヒトケラチノサイト細胞株 (HaCaT細胞) におけるウイルスDNA, タンパク合成量, 産生粒子量をそれぞれシスタチンAの有無別で測定し, そのHSV-1増殖抑制効果を調べた結果、プラークアッセイ法ではシスタチンA処理した群で、有意にウイルス粒子量が減少していた。 すなわちシスタチンAはHaCaT細胞においてもHSV1増殖抑制効果を有することが判明した。 これをもとに、HSV1関連ウイルスタンパク合成量(CP0,ICP4,TK,VP16,gC)をウエスタンブロット法で検討中である。 ⅱ) 実際にAD患者皮膚におけるシスタチンAの発現を, 皮膚を生検することで病理組織学的に検討を行った. 30名のAD患者皮膚組織においてシスタチンA染色を行ったところ、AD患者皮膚では健常者皮膚に比し、有意に染色量が低下していた。この結果はAD患者において皮膚バリアタンパクが減少することでHSV-1の易感染状態であることの裏付けとなる。残念ながらカポジ水痘様発疹症患者から検体を得られていないため、こちらの比較検討は今後の課題だである。さしあたり、AD皮膚において正常皮膚との比較検討することにより, シスタチンAの減少が把握できたため、今度はAD患者の正常皮膚と病変部皮膚との比較を行い、シスタチンA のさらなる役割を把握する計画を進めている. ⅲ) シスタチンAの抗ウイルス効果の汎用性の検討した.まずシスタチンAがHSV-1以外のDNAウイルスであるアデノウイルス5型の増殖を抑制するかHaCaT細胞での感染系を用い(ⅰ)と同様の検討をおこなった結果、プラークアッセイ法ではシスタチンA処理した群で、有意にウイルス粒子量が減少していた。 この事実はシスタチンAが広く抗ウイルス効果を有する可能性につながる。
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今後の研究の推進方策 |
ADは免疫学的にTh-2優位な状態である。そこでHaCaT細胞の培養液中に, (Th-2より分泌される) IL-4を添加し, ADに近い環境を作り出し、細胞抽出液をSDS-PAGE し, 特異抗体で,シスタチンA のバンドの現象を証明する。バンドが得られればシスタチンAの発現が予想されるため, 培養液中のシスタチンAをELISAで測定する。 Th2サイトカインにより,シスタチンAも発現低下する事を証明する。この現象が示されれば, シスタチンA とADにおける新しい知見になる。
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