ダリエー病では、表皮角化細胞小胞体に分布するカルシウムポンプであるATP2A2遺伝子産物の低下が、皮膚症状を引き起こすと考えられている。本症患者で自然界の紫外線(UV)暴露から症状悪化に至るメカニズムを解明し、抗UV効果のある治療法を明らかにするため、培養表皮細胞において、PGE受容体の作用薬投与下、拮抗薬投与下およびプロスタグランジンE(PGE)受容体siRNA導入によるPGE受容体(EP1-4)発現の抑制下でUV照射を行い、ATP2A2発現の変化を明らかにした。 その結果、UV照射によってEP4mRNA発現量が増加すること、EP4siRNA導入によってUV照射なし/あり両者でEP4mRNA発現量が低下することを、Real-time PCRにより確認した。Flow cytometryによるEP4タンパク定量においても、同様の結果が得られた。 次に、siRNA導入によってEP1-4ノックダウンを行った培養表皮細胞において、UV照射を行い、UV誘発性のATP2A2発現抑制の変化を調べた結果、EP4ノックダウンによってUV誘発性のATP2A2発現低下が抑えられること、またUV照射なしの表皮細胞においてもEP4siRNA導入のみでATP2A2発現量が増加することが、Real-timePCRでのATP2A2mRNA定量によって見出された。ウエスタンブロット法によるATP2A2遺伝子発現タンパク(SERCA2)定量においても、同様の結果が得られた。しかし、EP4作用薬投与下でのATP2A2発現量低下はみられず、またEP4拮抗薬投与下での紫外線照射でUV誘発性のATP2A2発現抑制は解除されなかった。 これらの結果から、臨床的に応用するにはEP4発現を効果的にノックダウンする方法の探索が必要であるが、EP4がUV照射時のATP2A2発現に抑制的に関与する事が強く示唆された。
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