今研究の目的は、Atg7KOマウスの皮膚移植片を用いて皮膚移植片を用いて皮膚炎誘導下でのオートファジー反応系因子の変化を観察し、オートファジー反応系から炎症に対する新しい治療薬の可能性を模索することである。 初年度の結果は、SCIDマウスへのAtg7KOマウス皮膚移植による観察研究においてQuantitative RT-PCRやWestern Blot法での解析によりフィラグリン、ロリクリン、インボルクリンの低下がみられ、オートファジーの欠乏が皮膚の分化に関与する可能性を示した(2015年 Archives of Dermatological Research掲載)。この結果から乾癬やアトピー性皮膚炎など一見正常に見える皮膚でも易刺激性により皮膚炎を惹起するような皮膚疾患への関与が推測される。 今年度の研究目的は引き続きAtg7KOマウス皮膚をB6マウスに移植し、接触皮膚炎やUV照射による皮膚炎におけるオートファジー反応系の変化の観察を進めていくことと各種皮膚疾患におけるオートファジー関連因子の関与を調べるため免疫染色での解析を行った。 扁平苔癬、尋常性魚鱗癬、皮膚B細胞リンパ腫、悪性黒色腫、日光角化症においてLC3の染色を行った。皮膚B細胞リンパ腫は正常皮膚との違いは見られなかった。扁平苔癬は基底層より徐々に染色性が高まり特に有棘層では正常皮膚と比べて染色性が強かった。尋常性魚鱗癬は基底層に強く染色がみられ逆に顆粒層では染色が弱かった。悪性黒色腫では、組織配列の乱れを反映して不規則にLC3の強陽性の染色がみられた。日光角化症でも極性の乱れている部では有棘層や基底層でも陽性となった。 今回の結果から表皮に異常を示す疾患でオートファジーの関与が示唆された。今後皮膚疾患や他のオートファジー関連因子の染色を進め解析を続けていく予定である。
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