研究課題/領域番号 |
26860899
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
田中 真実 (山本真実) 東京医科大学, 医学部, 助教 (60421062)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アトピー性皮膚炎 / S100A8/A9 |
研究実績の概要 |
皮膚バリア破綻後の炎症の慢性化に重要な役割を果たすと考えられるS100A8, S100A9について、各々の新規レセプターNeuroplastin, EMMPRINを介した信号系について解析を進めた。S100A8-Neuroplastin、S100A9-EMMPRINの反応において、Grb2およびTRAF2が各々のアダプター蛋白として同定された。これらのレセプターまたはアダプター蛋白をノックダウンすることにより、ケラチノサイトのS100A8/A9刺激に伴うp38およびERKのリン酸化が抑制されたことから、これらの信号系への関与が示唆された。 また、S100A8/A9が炎症の慢性化に寄与するか、これまでに作製した表皮特異的S100A8, S100A9 Tgマウスによる検証を行った。SDSによる単純刺激およびTNCBによる炎症・感作刺激の結果、前者ではwild typeに比べS100A8 Tgマウスの表皮肥厚が強く、後者においては炎症の遷延が認められた。そして、増殖マーカーであるKi-67染色陽性の細胞が、刺激後のS100A8 Tgマウスの表皮基底細胞で顕著に増加していた。さらに、皮膚組織より合成したcDNAを用いて、Th1およびTh2サイトカインの発現変化をqPCRにて検証した結果、S100A8優位の状態ではTh1が誘導され、S100A9が過剰発現している状態ではTh2系への分化が促進される可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目標は、皮膚バリア破綻に起因する炎症の惹起とその慢性化に至るメカニズムを解明し、アトピー性皮膚炎の発症の原因究明に迫ろうとするものである。本年度は、慢性炎症に関わるS100A8/A9とそのレセプターの信号系を解析し、また、Tgマウスの検証等から、S100A8, S100A9に各々特異的な作用を有する可能性を示すことができた。以上のように、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検証から、S100A8, S100A9はそれぞれ特異的な作用を持つのではないかという結果が得られてきた。そのため、S100A8, S100A9それぞれの特徴的な生理的機能の解明、免疫系への影響についてもさらに研究を進める。 また、これまでのmicroarrayによる検討結果などの報告から、アトピー性皮膚炎の皮膚においてはS100A9の発現亢進が顕著であり、乾癬ではS100A8がより亢進していると推定される。アトピー性皮膚炎においてS100A9が実際に優位であるのかどうか、免疫組織学的、生化学的手法を用いて明らかにする。 以上の検討から得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
育休による中断期間が存在したため。
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次年度使用額の使用計画 |
実験に必要な細胞培養関連試薬、DNA, RNA, 蛋白抽出試薬、PCR関連試薬、抗体、免疫染色関連試薬などの購入に使用予定である。
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