研究課題
アトピー性皮膚炎におけるバリア破綻後の炎症の慢性化にS100A8/A9が重要な役割を果たすのではないかと考え、S100A8、S100A9各々の新規レセプターとして同定したNeuroplastin(NPTN)およびEMMPRINとの相互作用について検討を進めてきた。培養ケラチノサイトにおいてNPTNおよびEMMPRINの発現を抑制すると、S100A8/A9刺激によるIL-8、TNFα、CXCL1などの炎症性サイトカインやケモカインの発現が抑制されることから、S100A8/A9と一連の炎症性サイトカインおよびケモカインとのポジティブフィードバック機構に、これらの新規レセプターが寄与していることが示された。また、NPTN、EMMPRINは培養ケラチノサイトにおいて膜型の局在を示し、ほとんど共局在を示していることが確認された。アトピー性皮膚炎の皮疹部では、S100A8、S100A9の発現部位にNPTN、EMMPRINの発現が認められ、PLA法によりこれらS100蛋白とレセプターの相互作用およびレセプター同士の相互作用も認めていることから、リガンドであるS100A8/A9に加え、これらレセプターもヘテロダイマーを形成することが示された。さらに、S100A8-NPTNはGRB2をアダプター蛋白としてERKの活性化により細胞増殖に関与し、S100A9-EMMPRINはTRAF2を介してp38の活性化を通じ炎症に寄与している可能性が示唆され、S100A8/A9はNPTN/EMMPRINを介して炎症や細胞増殖に機能する可能性が示された。以上より、アトピー性皮膚炎の病態にS100A8/A9とNPTN/EMMPRINが重要な働きしている可能性が示唆された。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Journal of Investigative Dermatology
巻: 136 ページ: 2240-2250
10.1016/j.jid.2016.06.617