研究課題/領域番号 |
26860902
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
冨田 秀太 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (10372111)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マイクロバイオーム / 次世代シークエンサー / 細菌叢 / アクネ菌 / プロバイオティクス / ニキビ |
研究実績の概要 |
近年、ヒト共生細菌が健康状態の維持にも重要な役割を担っていることが明らかになり、欧米を中心にヒト共生細菌叢の解析とカタログ作成が急速に進行している。本研究では、次世代シーケンサー(NGS)を用いて、日本人の皮膚共生細菌叢(スキンマイクロバイオーム)を解析し皮膚疾患の発症メカニズムにおける細菌叢の役割を解明するとともに、新規治療法の検討を行う事を目的としている。 平成26年度はNGSを用いた高解像度スキンマイクロバイオーム解析手法を確立するとともに、ファージを用いた新規治療法の検討を行った。その結果、高い再現性をもって細菌叢解析を行う一連の解析フローを構築する事に成功した。また新規治療法に関する研究として、患者サンプルから得られたファージライブラリーを用いて、代表的なアクネ菌亜種に対し、溶菌作用に対する感受性と耐性の網羅的な解析を行った。また、ファージ接種に対し広く耐性を示すアクネ菌亜種の高精度ドラフトゲノム配列解析の結果から、耐性メカニズムの獲得に寄与すると考えられる特徴的な遺伝子配列を見出すことに成功した。これらの結果をまとめた論文を専門誌に報告した。 平成27年度は当初メタゲノム解析手法を用いたサンプル解析を予定していたが、7月の移動に伴い一連の解析環境に生じた変更に対応するために研究の遅延が認められたため、研究期間の延長を行った。解析フローに関しては一部解析パイプラインの修正・追加を行うことで、精度の向上が認められた。一方、ヒト共生細菌に影響を及ぼしうる因子として宿主であるヒトゲノムの解析を進めている過程でNGSを用いた解析により精度良くケラチン遺伝子異常を解析出来ることを見出し、これらの結果をまとめて専門誌に報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究期間中に生じた所属機関の変更にともない、サンプル収集に関しては遅れが生じた為、研究期間の延長を行った。一方で、解析手法の確立、新規治療の検討に関しては計画通り順調に推移した。解析フローに関しては一部解析パイプラインの修正・追加を行うことで、精度の向上が認められた。新規治療法に関する検討としては、ファージを用いた研究から極めて興味深い結果が得られた。溶菌作用に対する感受性と耐性の網羅的な解析、および、耐性を示すアクネ菌のゲノム解列解析の結果について論文として報告するに至っている(ISME Journal 2015)。またヒト共生細菌とヒトとの相互作用を解析する上で重要となるヒトゲノム解析パイプラインの構築を行い、精度良くケラチン遺伝子異常を解析出来ることを見出し、これらの結果をまとめて専門誌に報告を行った(Br J Dermatol. 2016)。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を延長した平成28年度はサンプルの収集を加速し、当初目標の達成を目指す。アクネ菌の全ゲノム解析から得られた病原性のサブグループに注目し、特徴的なアクネ菌のゲノム配列解析を進め、モデル生物を用いた検証実験系の構築を検討する。また天然物由来の抽出物質などを用いた、プロバイオティクスの効果や増殖抑制効果等の検討も進めていく。亜種(strain, isolate)レベルでの解析をアクネ菌以外にも応用し、特徴的なゲノム配列の解明や分類手法の開発を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年7月から岡山大学に赴任したことに伴い、実験施設の変更や一連の申請手続きに時間を要したため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の研究計画に則り、サンプルの収集にかかる費用と次世代シーケンサーを用いた配列解析費用に充当する。また研究の遂行に必要な研究打ち合わせや学会活動に使用する。
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