本研究では、光トポグラフィーを用いることによって、日常生活の中での実際の対人交流場面に近い状況下での脳機能計測を行い、精神疾患患者の社会的認知の解明を行うことを目的とした。実際に対人行動を行なっている最中の脳機能画像研究はこれまでほとんど行なわれていないが、これはfMRI・SPECT・PETといった従来からの いずれの方法論でも検査中の被検者は仰臥位となりガントリー内で頭部を固定し、できるだけ無動を保つという、不自然な姿勢と状態を保たなければならないという制限があるということが大きい。光トポグラフィーは、脳機能測定時の被拘束性が比較的小さく、こういった測定中に実施する課題の制約を受けにくいという特徴がある。この特徴を活かして、実際の日常生活の中での対人交流場面として、人と面と向かって会話をしている最中の脳活動を測定を行った。初年度である本年度には、1. 対人交流場面での脳機能計測のための課題の確立、2. 実際に健常者と統合失調症・うつ病・双極性障害といった精神疾患患者を対象に実際に脳機能計測を行い、それぞれの疾患における社会的認知障害に関連した脳機能的な特徴を検討する、3. 向精神薬服用による脳機能への影響の検討、を行った。1. 2.に関しては、これまでも予備的検討を行っておりその結果を論文発表してきたが、本年度もデータの蓄積を続けた。また、うつ病と双極性障害を対象にした研究成果を今年度新たに論文発表した(Takei et al. 2014)。3. に関しては、実際に対人緊張などの社交不安の治療にも用いられている抗不安薬(アルプラゾラム)内服による脳機能への影響の検討を行い、健常者を対象に、対面会話を行っている最中の脳機能計測をプラセボ比較対象試験(単盲検、クロスオーバーデザイン)として行い、データの収集と解析を行った。
|