研究課題
成体期のメスでは成体期のオスや思春期前期のメスに比べて恐怖消去トレーニングに抵抗性を示すことを見いだしている。本研究においても、成体期のメスでは成体期のオスや思春期前期のメスに比べて恐怖消去トレーニングに抵抗性を示し、再現性を得るのに成功した。次に、恐怖消去トレーニング後の背側海馬と内側前頭前野に対してDNAマイクロアレイ法を実施し、恐怖消去トレーニング後の遺伝子発現量に性差もしくは週齢差のある遺伝子を網羅的に探索した。その結果、1.5倍以上発現量に性差のある遺伝子を306個、週齢差のある遺伝子を248個得た。さらに、1.5倍以上発現量に性差及び週齢差のある遺伝子を16個得た。続いて、これらの遺伝子情報とバイオインフォマティクスを利用して恐怖消去トレーニング抵抗性に関与することが予測される遺伝子候補を35個得た。35個の遺伝子候補のうち、それぞれの解析結果と既報の有無による選別を実施し、Cxcr4、S100a9、Nfkbiaに候補遺伝子を絞り込んだ。また、恐怖消去トレーニング抵抗性を改善するのに効果的と予測される薬物候補を12個得た。12の薬物候補のうち、薬物の投与方法及び既報の有無による選別を実施し、ロシグリタゾンとデキサメタゾンに候補薬物を絞り込んだ。本研究は恐怖消去トレーニング後に発現する遺伝子の性差及びメスでの週齢差について網羅的に調べた初めての研究となる。そのため、本研究の成果は恐怖消去トレーニングの性差や週齢差に関わる遺伝子を研究していく上で、基盤的な研究となることが期待される。さらに、今後予測された遺伝子候補の恐怖消去トレーニングへの関与及び薬物候補の効果について検証することで、メスにおける恐怖消去トレーニング抵抗性に関わる分子機構の解明に繋がる。
2: おおむね順調に進展している
計画に予定されていた通り、恐怖消去トレーニング後の背側海馬と内側前頭前野に対してDNAマイクロアレイ法を実施し、その結果についてバイオインフォマティクスを用いた解析を終えている。また、他施設で行っていた行動実験の結果について本研究施設において再現性を得ることに成功し、本研究施設での系の確立に成功している。また、本年度で得られた遺伝子候補をIn situ hybridization法で検出する系の確立に取りかかっている。
まず、得られた遺伝子候補の脳内分布をIn situ hybridization法を用いて調べる。続いて、恐怖消去トレーニング後のサンプルについてIn situ hybridization法による解析を実施し、DNAマイクロアレイ法の結果について検証する。また、得られた薬物候補を成体期のメスに投与し、恐怖消去トレーニングを実施する。薬物候補の効果を行動薬理学的手法を用いて検証する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
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