研究実績の概要 |
自閉症スペクトラム障害(ASD)の多発罹患家系において、稀な変異がその発症に重要な役割を果たすことが示唆されている。我々は、稀なリスク変異の同定を目的として、多発罹患家系の全エクソン解析とフォローアップ研究を行った。 多発罹患家系には計4人の罹患者(発端者、同胞1人、母方従兄弟2人)が含まれている。ゲノムDNAが得られた4人(発端者、罹患同胞、非罹患同胞、保因者と推定される母)について、全エクソン解析を行った。同定された稀な候補リスク変異を症例・対照サンプル(243対667)でタイピングした。 多発罹患家系の全エクソン解析により検出された変異(202,401個)について、1)カバーリード10以上(101,832個)、2)発端者と罹患同胞が共有(57,629個)、3)非罹患同胞は保有しない(6,342個)、4)母から伝達(4,047個)、5)ナンセンスまたはフレームシフト変異(22個)、6)変異アレル頻度0.01未満(2個)、の条件でフィルタリングを行い、RPS24遺伝子Q191X変異とCD300LF遺伝子P261fsX266変異を同定した。しかし、フォローアップ研究の患者243人と対照者667人の計910人においては、これらの変異は同定されなかった。 2つの稀な変異(RPS24遺伝子Q191X変異とCD300LF遺伝子P261fsX266変異)が、ある特定の家系においてはASDの発症に寄与する可能性が示唆され、その結果を報告した(Inoue, et al., epub Psychiatry Clin Neurosci)。
|