稀なリスク変異の同定を目的として、自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder; ASD)罹患同胞2家系のエクソーム解析と2段階フォローアップ解析を行った。家系#1はASD罹患同胞3人と両親(非罹患者)、家系#2はASD罹患同胞3人、父(罹患者)、母(非罹患者)からなる。この2家系の罹患同胞計6人のゲノムDNAから作製されたエクソームライブラリをHiSeq2000でシーケンスした。フィルタリングにより選択された新規の稀なミスセンス変異は、2家系10人でサンガーシーケンスした。これらの変異について、新潟サンプル(症例241・対照667)と名古屋サンプル(症例309・対照350)を用いた2段階フォローアップ解析を行った。遺伝子型判定にはTaqman法を用いた。エクソーム解析により6つの稀な新規ミスセンス変異が同定され、これらの中でCLN8 R24Hは家系#2で疾患と共分離していた。新潟サンプルではCLN8 R24Hのみが症例群(1/482)で対照群(1/1334)よりも変異アレル頻度が高かった。この変異を名古屋サンプルでタイピングしたが、変異保有者はいなかった。両サンプルのデータを組み合わせた結果、CLN8 R24Hの変異アレル頻度は症例群が対照群よりも高かったものの(オッズ比1.8)、その差は有意ではなかった。CLN8 R24Hが、ある特定の家系においてはASDの発症リスクに寄与している可能性が示唆されたが、ASD一般のリスク変異であることは確認できなかった。
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