研究課題/領域番号 |
26860919
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
吉村 優子 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 協力研究員 (70597070)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 乳幼児 / 脳磁計(MEG) / 聴覚誘発磁場 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、0歳から1歳6ヶ月の乳幼児期の聴覚刺激に対する脳反応を幼児用脳磁計(MEG)を用いて横断的に計測し、合わせて臨床的な行動評価との変化をみることにより、乳幼児期の社会性および言語能力の発達に関連する脳機能の特徴を捉えることである。さらに、言語や社会性能力の発達に障害が見られる、自閉症スペクトラム障害児と比較を行い、自閉症スペクトラム障害児と健常発達児の脳機能の発達パターンの相違について明らかにすることである。平成26年度は、平成25年度までに行った予備的な実験として、2歳から10歳までの健常児および自閉症スペクトラム障害児を対象に、人の声によって引き起こされた脳反応と言語能力の関係について解析を行い、左半球の人の声に対する脳反応が大きくなった子どもほど、言語能力の伸びが大きかったという結果について、国際的学術誌に報告した。また、3歳から9歳の自閉症スペクトラム障害児と健常発達児を対象に、人の声に対する脳反応の成熟パターンの違いについて明らかにした結果について、現在論文投稿中である。 また、3名の0歳の健常発達児に対して、人の声に対する脳の反応を縦断的に計測しており、乳幼児に適した実験環境や課題設定について検討をおこなっている。平成27年度は、これまでの予備実験の結果を踏まえ、さらに参加者を増やして実験を進める。自閉症スペクトラム障害児の兄弟であり、3ヶ月から18ヶ月の乳幼児についても募集を行い、自閉症スペクトラム障害児の兄弟がいない群との比較を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに行った、2歳以上の子どもの聴覚反応と言語能力の関係についての結果について、非常に興味深い結果が得られており、この結果はこれから0歳台の乳幼児の実験を行っていく上で非常に有用である。 また、自閉症スペクトラム障害の兄弟がいない0歳台の乳幼児数名について、既に予備的な実験を行っており、解析に耐えるデータを取得することができている。 27年度は得られたデータを解析し、論文化して国際学術雑誌に投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、0歳台の乳幼児の参加者を増やし、更なるデータを収集する予定である。その際、上に自閉症スペクトラム障害の兄弟がいる乳幼児の参加者が得られにくい可能性がある。その際には、金沢大学子どものこころの診療科からの紹介だけでなく、これまで2歳以上の脳機能計測に参加していただいた家族に対して、参加募集を呼びかけることを考えている。これまでの予備的な実験によって、乳幼児に適した実験環境や課題設定を行い、万全の体制を整えてはいるが、乳幼児の機嫌や体調よっては、実験結果に影響が出ない程度に柔軟に体制を変え、できるだけ多くのデータを取れるよう努力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、平成25年度までに収集した2歳以上の被験者を対象とした実験結果の解析およびボランティアとして協力が得られた数名の0歳児の縦断的な計測を行うことによって、乳幼児の適切な実験環境や課題設定の検討を中心に行ったため、物品や謝金として支出の必要がなかった。そのため、26年度の使用額を平成27年度に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、0歳から1歳6ヶ月児の健常発達児20名と上に、自閉症スペクトラム障害の兄弟がいる乳幼児20名、計40名をリクルートし、2ヵ月ごとに脳機能測定を行うことによって縦断的なデータを収集する。謝金を1回につき5000円(一人約5回)支払う。物品については、課題提示用のPC、音声提示機器等を購入する。ワシントン大学の乳幼児の言語発達の研究者とのディスカッション、得られた結果を国際学会と国内学会で1回ずつ発表するために旅費を必要とする。その他の費用として、論文の英文校正、出版費を必要とする
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