研究課題
統合失調症は、幻覚や妄想などの陽性症状、意欲低下や引きこもりなどの陰性症状、および認知機能障害を呈する精神疾患である。また、多くの患者は社会機能、生活機能の低下をきたすことになり、患者の社会生活に大きな影響を及ぼしている。本研究では、社会機能検査として、金銭出納技能や、ロールプレイを取り入れたコミュニケーションの機能評価および、多様な生活領域の機能、生活の自立(能力・実行)、社会参加や対人関係などの領域の機能評価を用いて、患者の社会生活上の困難を評価している。このように、社会機能評価に複数の検査を用いることで、社会機能の能力的側面と実生活でのパフォーマンスの乖離が患者の機能的転帰を左右しているのかを検討することができるようになる。統合失調症患者の社会生活機能を左右する要因として認知機能と精神症状が大きな要因とされているが、それに加えて、社会的スキルの能力も患者の社会生活機能に影響する重大な要因である。そのような関係を明らかにするために、健常者106例、統合失調症患者93例を対象としてこれらの要因の関連を検討した。その結果、社会的スキルや社会機能は認知機能や精神症状と関連することを明らかにした。さらに、認知機能のレベルが就労に与える影響を、社会的スキルが媒介しているというモデルは、得られたデータにもよく適合していた(CFI = 0.987; RMSEA = 0.072)。以上の結果から、統合失調症患者においては、社会生活機能の一部は社会的スキルを介した認知機能の程度によって影響されていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、統合失調症患者の社会機能障害につながる遺伝的基盤を明らかにすることを目的とした研究である。これまでの成果として、一定数の患者、健常者のサンプルの集積を行ってきており、現在も研究実施体制を維持してリクルートを継続してきている。統合失調症患者の社会生活機能を左右する要因として、社会的スキルの能力も加えて、患者の社会生活機能に影響する要因を検討した。その結果、認知機能が就労に与える影響を、社会的スキルが媒介しているというモデルがデータによく適合することを明らかにした。このような結果は、統合失調症患者における社会機能障害の特徴を示していると示唆される。このように、これまで、健常者と統合失調症患者のリクルートに加えて、社会機能検査や神経生理機能検査、脳画像の収集を行ってきている。それらの成果をまとめることもできており、研究は計画通り遂行できていると考えられる。
これまでにリクルートしたサンプルを用いて、解析を継続することに加え、新たなサンプルを集積し、大サンプルで社会機能障害と遺伝子他型との関連を検討していく予定である。そのため、これまで同様に、既に確立された体制により効果的、効率的に健常対照群および患者群のリクルートを継続して行っていく。さらに収集したサンプルを追加した大規模サンプルで比較検討を進めていく。また、日本神経科学会、日本精神神経学会などの国内学会、および国際学会において研究成果の発表や研究打ち合わせを継続して行い、研究を推進していく予定である。
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