【背景】統合失調症を含む精神病において、エピソードの顕在化前から早期に診断し、治療的介入を行うことは、発症の予防や予後の改善につながり、その意義が強調されている。現状の統合失調症の早期リスク診断は構造化面接を主体とした診断であり、科学的根拠に基づいたバイオマーカーの開発が喫緊の課題である。 【目的】発症危険状態(at risk mental state : ARMS)の児童思春期の症例に対し、「尿中及び唾液中のバイオマーカー」を用いて、酸化ストレス状態を測定した。 【方法】SCID-Dによりに基づいて診断された7歳から18歳までの精神病前駆状態群(ARMS)22名(平均年齢14.8、m:f=8:14)、性別、年齢を適合させた健常者群21名(平均年齢13.1、m:f=7:14)における対象とした。唾液コルチゾール値、αアミラーゼ値、クロモグラニンA値、尿中8OHdG値、バイオピリン値を測定し、比較検討を行った。本研究は、島根大学医学部倫理委員会の審査を受け、承認を得て行った。被験者及び家族に対しては、書面にて研究の目的、検査の内容等を説明し、署名による参加の同意を得た。 【結果】唾液中コルチゾール値、クロモグラニンA値は有意差を認めなかったが、唾液中αアミラーゼ値、尿中コルチゾール値、バイオピリン値などのストレスマーカーはARMS群で有意に高く、尿中8OHdG/CrはARMS群で有意に低かった。 【考察】唾液中αアミラーゼ値、尿中8OHdG値、尿中コルチゾール値、バイオピリン値などの複数のストレス―カーを用いて統合失調症の前駆期の早期診断についての客観的な指標になりうる可能性が示唆された。今後は症例を増やし、ARMS群のバイオマーカーの変動についても検討する予定である。
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