聴覚刺激における会話音処理には2~5 Hzの複数振幅変調が複合した時間エンベロープの統合が重要であることが知られており、聴覚定常反応(ASSR)によって被験者のピッチ処理能力を計測できる。申請者は連続クリック音両耳刺激によるASSRを双極性障害に応用し、右半球のASSRパワーと位相同期度がともに低下していること報告した。しかし両耳刺激のため両側聴覚刺激野の神経細胞が活動してしまい、その異常が両半球性であるのか右半球単独であるのかは解明できていない。本研究では両耳、片耳刺激呈示により双極性障害の右半球異常を証明する。方法は、被験者に安静座位の姿勢でイヤホンから20,30,40,80Hzの音を片耳からランダムに呈示し、306 ch-MEGを用いて脳磁場を記録した。解析は最小乗る無法によって最大活性化領域を3T-MRI画像上に重ねて被験者が活性化した領域を関心領域(ROI)として設定し、その後ROIのMEG反応に対して時間周波数解析を行いASSRパワー値と位相同期性を定量化した。統計は各周波数刺激のMEGデータについて繰り返しのある反復測定(ANOBA)を行った。両耳刺激においては特に40Hzのパワー値において健常者群では増強 が時間周波数領域で明らかであったが患者群では所見が乏しかった。これらのデータをもとに双極性障害患者の右半球異常性の病態解明をさらに発展させることができれば、将来的に症状判断に頼る現在の臨床現場において、双極性障害の客観的なバイオマーカーとしてのASSRが応用できることを目指している。
|