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2014 年度 実施状況報告書

iPS細胞を用いた培養系・移植実験系による統合失調症の神経細胞病態解明

研究課題

研究課題/領域番号 26860940
研究機関奈良県立医科大学

研究代表者

鳥塚 通弘  奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20588529)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード統合失調症 / iPS細胞 / シナプス / 培養系
研究実績の概要

奈良県立医科大学精神科に通院、入院中の統合失調症患者で本研究に同意能力があり同意を得た患者、および本研究の趣旨に賛同する健常対照者を対象とした。現在までに、11名の統合失調症患者および12名の健常対照者から、研究参加の同意を得て、上腕内側部からパンチバイオプシーを行ったが、特に合併症は生じなかった。得られた皮膚から皮膚線維芽細胞を培養し、保存した。このうち8名の線維芽細胞を基に、エピソーマルプラスミドベクターを用いた方法でiPS細胞を樹立し、保存した。作成したiPS細胞のうち、双子1ペア及び年齢・性別をマッチさせた健常対照者1名の計3名のサンプルを用いて、以後の解析を行った。
樹立したiPS細胞株の中から、プラスミドベクター由来遺伝子の残存のない株をqPCRで確認し、選別した。iPS細胞の多能性細胞マーカーの発現を免疫染色で確認したが、患者・健常者間で差は認めなかった。
次に、神経細胞への分化誘導を行った。神経幹細胞への分化誘導性、幹細胞の増殖能に差は認めなかった。誘導後2-3カ月培養すると、免疫染色で成熟ニューロンのマーカーであるMAP2の発現、また興奮性シナプスを形成する蛋白としてSynaptophysin(シナプス前蛋白)およびPSD95(後シナプス)についても確認できた。機能的な解析のため、これら分化誘導したニューロンの電気活動を、パッチクランプ法を用いて記録した。いずれのサンプルから誘導したニューロンも、培養3カ月が経過するとニューロンは成熟した様相を呈し、current-clampでは連発する活動電位を示し、spontaneous post-synaptic current(自発性シナプス後電流)も認めた。統合失調症患者由来の培養ニューロンでは、免疫染色および電気生理学的解析でシナプス蛋白の減少が示唆される結果を得ている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

検体のうち、特に高齢検体において、iPS細胞の誘導効率が悪く、iPS細胞を樹立する段階で樹立作業を複数回行う必要が生じ、予定よりも時間を要している。また、分化誘導については以前よりも誘導機関が短く、誘導効率も上昇していることを確認できているが、データを得るためにはiPS細胞から分化誘導して3ヶ月以上は培養期間が必要であることから、各個体につき2-3株の神経細胞への分化誘導が可能なiPS細胞株を探索し、さらにデータを取得するという行程について、時間を要している。
双子不一致症例の3ペア分はiPS細胞の樹立に至っており、解析に至っていない2ペアのうちでも神経細胞に分化誘導な株の検索は進めている。

今後の研究の推進方策

現在、より神経細胞の成熟を促す因子を加えて培養しており、これにより成熟した神経細胞を得るまでの期間の短縮、また効率の上昇が期待される。技術的に分化誘導法については安定してきているため、数を増やして解析していく。差異の得られそうなターゲットとしては、シナプスの形成に的を絞って解析を進めていく。免疫染色やウェスタンブロット法による蛋白質の発現状態や、電気生理学的解析による機能的な解析を行う。

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公開日: 2016-06-01  

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