研究実績の概要 |
本研究では、東京慈恵会医科大学附属病院及び同柏病院精神神経科に通院または入院中で65歳未満である大うつ病患者36名と精神疾患の既往のない健常者30名を対象に解析を行った。 全血から、mRNAを精製し、real-time RT-PCRにて、炎症性サイトカインであるインターロイキン(IL-)1β、IL-6、酸化ストレスの指標であるheme oxygenase 1 (HMOX-1)、長鎖ノンコーディングRNA (lncRNA)であるHomo sapiens RNA, U4 small nuclear 23, pseudogene (RNU4-23P)、Colorectal Neoplasia Differentially Expressed (CRNDE)及び内在性コントロールとしてβ-アクチンの発現を定量した。その結果、うつ病患者において、健常人と比較し、IL-1β、IL-6及びRNU4-23Pに有意な変化を認めなかったが、HMOX-1 mRNAの有意な上昇とCRNDEの有意な低下を認めた。 本研究の結果、大うつ病患者では酸化ストレスが亢進していた。一方、今までの大うつ病患者における検討で炎症性サイトカインやlncRNAが上昇する報告があるが、本研究では再現できなかった。この理由として、血液中の炎症性サイトカインは血液由来ではない可能性があること、大うつ病がヘテロな集団であること、炎症性サイトカインが運動等そのほかの要因によって変化することが考えられた。以上のことから、酸化ストレスマーカーは炎症性サイトカインの測定よりもうつ病に対して、鋭敏なバイオマーカーとなることが示唆された。 本研究課題は今年度が最終年度であり、今後、今までの研究結果をまとめ、論文として発表する予定である。
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