統合失調症患者を対象として、安静時機能的MRI(rs-fMRI)、静脈血採血によるリスペリドン・9-OHリスペリドンの血漿中濃度測定(ドパミンD2/3受容体占有率推定)精神尺度である 陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、自記式心理検査である行動抑制系・行動賦活系尺度(BIS/BAS)日本語版、行動心理実験であるsalience attribution test(SAT)による異常顕現性の測定を行った。統合失調症患者9名のEcho Planner Imagingデータに対し、FMRIB Software Library(FSL)ソフトウェアバージョン5を用い、前処理ののちグループ独立成分分析(independent component analysis)を施行し、前頭皮質内側面、前島皮質および線条体を中心とした独立成分、すなわち各脳領域における顕現性回路の占める脳領域を確認した。同時に顕現性回路内脳領域内の灰白質体積を算出する目的で、各患者のT1強調画像をstatistical parametric mapping(SPM)ソフトウェアを用いて、分割化、Diffeomorphic Anatomical Registration using Exponentiated Lie Algebra(DARTEL)による位置合わせ、Montreal Neurological Institute(MNI)テンプレートへの標準化モジュレーションおよび平滑化を行った。リスペリドン・9-OHリスペリドンの血漿中濃度は14.8±7.5(平均±標準偏差)ng/mlであった。このリスペリドン血漿中濃度から推定した、リスペリドンによる脳内ドパミンD2/3受容体占有率は55.6±21.5(平均±標準偏差)%であった。SATによるaberrant salience値を算出した。グループICA解析による、前頭皮質内側面、前島皮質および線条体内の顕現性回路の占める代表的な脳領域内を関心領域とした灰白質の体積と推定された脳内ドパミンD2/3受容体占有率間の相関分析を行った。続いて同領域の灰白質の体積とaberrant salience値の相関分析を行い、リスペリドンによるドパミンD2/3受容体占有率・異常顕現性と機能的に最も相関する脳領域を探索した。
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