研究課題/領域番号 |
26860956
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
加藤 智朗 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (40598439)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / 双極性障害 |
研究実績の概要 |
Ant1遺伝子の成体マウス神経機能における役割を調べるため、Ant1 floxマウスとnestin-Creマウスを掛け合わせ、神経系特異的Ant1コンディショナルノックアウト (cKO) マウスを作製して行動実験を行った。これまでに、集団飼育下で個々のマウスの行動を評価できる装置を用いて、空間記憶学習、恐怖記憶学習、注意力、焦燥、サッカリン水を用いた報酬選択における遅延割引課題への影響を調べた。これらの解析により日内行動量の変化が示唆され、空間記憶学習、恐怖記憶学習、注意力、焦燥に異常は見られなかったが、遅延割引課題における衝動性は抑制される傾向が示された。 Ant1 cKOの前脳由来細胞から単離したミトコンドリアの性質を調べるため、カルシウム添加によるミトコンドリア膜透過遷移現象(mPTP)の起こりやすさを調べたところ、Ant1 cKO由来ミトコンドリアではコントロールとして用いたミトコンドリア(Ant1 fl/fl、Creアリルなし)に比べてmPTPが誘発されやすい事が明らかになった。 また、細胞レベルでのAnt1遺伝子の機能を調べるため、Ant1遺伝子をノックダウンすることができる改変型miRNA発現ベクターを神経系株化細胞であるNeuro2aトランスフェクションし、発現を抑制させた細胞でGOATeamというATPの細胞内分布を評価できるプローブを用いてイメージングを行った。Ant1をノックダウンした細胞ではオリゴマイシンA添加によりATPの合成を阻害した後でも、ミトコンドリア内ATP濃度は高く維持された。これはAnt1の発現抑制によりミトコンドリアと細胞質間におけるADP, ATP交換反応が抑制されたためだと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた実験計画はほぼ予定通り遂行できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は中枢神経系でのAnt1欠損により傷害される脳領域や細胞種を特定し、表現型の表出に関わる神経回路を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたベクター構築の一部が年度内に行えなかったため、次年度に持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
アデノ随伴ウイルスベクターの作製や脳領域特異的に発現するCreマウスの購入を検討している。
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