ヒスタミンは認知症をはじめとした様々な精神疾患の発症に関係していると考えられており、ヒスタミン受容体と認知神経機能との関連性を明らかにすることは、精神疾患の病態解明や治療法開発に重要である。本研究は、健常被験者を対象として脳内ヒスタミンH3受容体(H3R)密度と、認知神経機能の関係性を解明することを目的とした。 健常者男性10名を対象にPET検査と機能的MRI(fMRI)検査を行った。H3Rの密度測定においては、様々な定量解析法を検討した結果、最適な定量法の確立に至った。定量法については同研究室から論文としてまとめ掲載されている(木村ら(2016)、EJNMMI)。 認知神経機能に関する神経回路を特定するため、作業記憶課題を用いたfMRI検査を行った。被験者は画面に提示された数字の順番を記憶しつつ回答する作業を行った。様々な難易度の条件を設定することで、課題を行う際の負荷の増大によって活動が上昇する領域を特定した。特に前頭葉において賦活する領域が確認できた。 脳内H3R密度と認知神経機能の関連性を検討するため、まずfMRI検査で作業記憶遂行中に賦活する領域のROI画像を作成し、それぞれの領域における各被験者のコントラスト係数を算出した。次に、同じ領域のROI画像を用いてH3R密度の定量解析を行った。fMRI検査で得られた各被験者のコントラスト係数と、PET検査で得られたH3R密度のデータを網羅的に解析することで、前頭葉において脳内H3R密度と作業記憶に関わる認知神経機能が関連することが明らかとなった。人を対象とした研究で、脳内H3R密度と認知神経機能との関連性を初めて明らかとした。
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