開発者・Dr. Surti(米国Yale大学)との協議を行い、本研究で用意した機材で、”刺激提示時間=10ms”ならびに”刺激間隔=10ms~100ms(10ms刻み)"が正確に提示できていることを、高速撮影が可能なデジタルカメラを用いて検証・確認した。 国立精神・神経医療研究センター病院に通院中の統合失調症あるいは統合失調感情障害と診断された20-60歳のうち、最近6ヶ月にわたって抗精神病薬の変更を必要としなかった統合失調症を対象とした。なお、推定病前IQが70以下、導入時点でアルコール・物質乱用を併発、頭部の外傷歴・手術歴、矯正視力両眼0.7未満、スクリーニング時に著しい希死念慮、などに該当する者は除外した。VBMプログラム開始4週前に精神症状、認知機能、表情認知などの評価した。その後、初回セッション時にに再度同じ心理検査を行い、VBMプログラムを全20回実施した。終了時に再度心理検査実施し、さらに終了6週間後に、フォローアップ検査として、同じ検査を実施した。研究参加時からフォローアップ時の間は、認知機能の改善に関連する他の治療法は受療していない。 現在までに8名(男4名、女4名)が参加し、いかなる有害事象も確認されず、安全に実施できている。これまでに4名が修了した。修了者の心理検査結果を解析したところ、BACS(統合失調症認知機能簡易評価尺度)日本語版の符号課題において、フォローアップ時に符号課題の成績が、開始時(p=0.05)ならびに終了時(p=0.005)に比べ有意に向上していた(59±11.6[開始4週前]→57.25±12.5[開始時]→59.25±9.4[終了時]→67.5±11.5[フォローアップ時])。少数例に基づく結果ではあるが、VBMプログラムの神経認知機能に対する改善効果が介入終了後に遅延して波及する可能性が示唆された。
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