セロトニントランスポータは神経伝達物質であるセロトニンの再取り込みを行うため、セロトニンの機能と関連している。セロトニンは必須アミノ酸のトリプトファンから産生され、脳内モノアミン神経系では生理機能などに深く関係している。覚醒時のセロトニン神経系の活動が抑制されることにより、うつ病や慢性疲労症候群などの症状が惹起されると言われている。セロトニントランスポータ遺伝子はSS型、SL型、LL型に分けられ、遺伝子型を有する割合は、国や民族によって異なる。セロトニントランスポータの発現が少ないSS型の割合は欧米人に比し日本人で著しく高く、不安傾向との相関関係が認められ、さらにSS型と2型糖尿病発症リスクに有意な相関関係が認められると報告されている。11C-3-amino-4-(2-dimethylaminomethyl-phenylsulfanyl)benzonitrile (C-11 DASB)を用いることで、脳内セロトニントランスポータ機能を定量評価することが可能である。 我々は、脳内セロトニントランスポータ機能、交感神経機能の評価を行うため、C-11 DASB PET/CT及び心拍変動モニターでの解析を始めた。まず対象となる健常者を募り、SDSや精神状態短縮検査などを行い、精神疾患がないことを確認し、頭部MRIにて器質的異常がないことを同時に確かめた。現在までに9人が検査を完遂している。今後、①セロトニントランスポータの機能低下によりセロトニン濃度が低下し、直接インスリン分泌が低下することで糖尿病が発症するという仮説や、②セロトニン濃度が低下することで、ノルアドレナリン分泌などの交感神経を抑制できずに、インスリン分泌が低下するため糖尿病が発症するといった交感神経を介する仮説を立証すべく、病態と交感神経機能障害、脳内セロトニントランスポータ分布の関係を検討する予定である。
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