研究実績の概要 |
前年度と同様、ヒト肺腺癌由来細胞系列 A549を通常酸素下および低酸素(1%O2)下で培養し、CSCを誘導した。CD133陽性細胞をCD133磁気ビーズ抗体で標識し、細胞懸濁液を磁気ビーズカラムに通し、CD133陽性細胞とCD133陰性細胞を分離した。これらの細胞を0, 2, 4, 6, 8 GyのX線照射を行った。細胞生残率をコロニーアッセイにより評価した。CD133陽性細胞分画はCD133陰性細胞分画と比較し、放射線抵抗性を示し、6Gy照射時に放射線抵抗性は有意であった(p<0.05)。 前年度に予備的に行ったCD133陽性細胞の全体に占める比率の評価について再評価を行った。FITC結合抗CD133抗体、7-AADで染色し、CD133陽性/7-AAD陰性の細胞をCD133陽性生細胞として評価した。通常酸素下での定常状態での細胞分画は0.36 ± 0.21%であったが、低酸素下での96時間の培養でCD133陽性細胞は3.08 ± 0.86%まで誘導された(p<0.01)。CD133陽性細胞の絶対数は0時間の定常状態と比較して32.7 ± 8.2倍まで増加した(p<0.005)。 CD133陽性分画の誘導効果としての、X線照射と低酸素の相乗効果の有無を検討した。低酸素培養48時間後にX線 5 Gyを照射すると、CD133陽性細胞は4.9%(p<0.05)にまで増加した。これに対してX線10Gyを照射した場合にはCD133陽性細胞の誘導効果への促進作用は認められなかった。
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