本研究では、3-ヨードベンジルグアニジン(MIBG)の4位をポジトロン核種である18Fで置換した18F-FIBGおよびそのアナログを簡便な標識操作で高収率に得られる標識合成方法を確立し、その褐色細胞腫PET診断薬剤としての有用性評価を行うことを目的とする。 近年、遷移金属触媒存在下、超脱離基であるヨードニウムイオンを持つジアリールヨードニウム塩を標識前駆体として用いることで、これまで合成が困難とされてきた18F標識化合物が合成可能となることが報告されてきた。そこで本研究では18F-FIBG標識におけるジアリールヨードニウム塩を用いた反応の応用可能性を検討した。グアニジノ基を保護したジヨードベンジルグアニジンからヘテロジアリールヨードニウム塩を作製し、質量分析により目的とする18F標識前駆体と同一のm/zを有する化合物の生成を確認した。しかし、NMR分析の結果から、本化合物はジヨードベンジルグアニジン誘導体の3位または4位にアリール基が結合した位置異性体混合物であることが判明した。種々の分離手法や合成経路の変更により、位置選択的な前駆体の合成を試みたが、位置異性体の分離は困難であった。そこで、位置異性体混合物を用いて18F標識実験を実施した。Cuプレ触媒を標識前駆体の1等量用いる既報の方法では、標識率は5 % 以下と低収率であったが、プレ触媒量を5等量にまで増加させることにより標識率は10 - 64 % にまで改善した。得られた18F標識MIBGアナログを褐色細胞腫細胞PC-12担癌マウス尾静脈より投与し、小動物用PET装置を用いて撮像を行ったところ、腫瘍を明瞭に描出することができた。
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