研究課題
前年度の検討結果よりβ-catenin変異型肝細胞癌は非変異型と比較して組織学的に分化度が高く、血清AFP値が低いことより悪性度の低い亜型であることが推測されたが、予後評価では生存率、再発率の有意な差は認められなかった。肝細胞癌においてβ-catenin変異がOATP1B3発現に関与している可能性が示されたが、今回はOATP1B3の発現を主に制御すると報告されている転写因子HNF4α(hepatocyte nuclear factor 4α)に着目して検討を行った(Hepatology. 2014 ;60:1674-85.)。β-catenin変異とHNF4α発現の有無により4群に分類し, EOB-MRI肝細胞相での増強率、OATP1B3発現、腫瘍分化度について比較検討した。その結果、β-catenin変異とHNF4α発現の両方を示す肝細胞癌は、他の群と比較して有意にOATP1B3の発現が増加しており、EOB-MRI肝細胞相での増強率が高く、分化度も高いことが明らかになった。つまりEOB-MRI肝細胞相での増強率増加すなわちOATP1B3の発現には、β-catenin変異とHNF4α発現の両者が必要であることが示唆された。この結果よりEOB-MRIは肝細胞癌の特定の分子・遺伝子発現を反映する可能性があり(radiogenomics)、今後の個別化診療において有用であると考えられた。
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