研究実績の概要 |
本研究の目的は、治療用ベータ-線放出核種であるイットリウム-90(90Y)の高い腫瘍集積性と正常組織における不必要な被曝の低減を同時に達成しうる新たな内用放射線療法を確立することにある。そのために、熱により凝集するポリオキサゾリン誘導体を利用し、その90Y標識体について、温熱療法との併用による高い腫瘍集積性および腫瘍縮小効果の達成を目指す。熱凝集前のポリマーは比較的速やかな生体クリアランスを示すことが予想され、副作用の低減につながることから、上記に示す目的を達成できるものと考える。今年度は、熱応答凝集性ポリオキサゾリン誘導体の合成(最適化)および111In標識体の作製、担がんマウスにおける体内分布評価を実施し、以下の結果を得た。 (1)熱応答凝集性ポリオキサゾリン誘導体の合成:側鎖にエチル基とイソプロ基を1:4の割合で導入したポリオキサゾリン誘導体を合成し、その凝集温度が体温以上であり、かつ、温熱療法の適用温度域である42~43℃を超えないことを確認した(約39℃)。また、111In標識体を放射化学的純度99%以上で合成した。 (2)担がんマウスにおける体内分布評価:111In標識ポリマー(18 kDa, 0.4 nmol)をマウス尾静脈より投与し、体内分布を調べた。投与1日後に腎臓への集積を認めた一方で、正常組織への集積の程度は低かった。Colon26腫瘍においては、約3.6%ID/gの集積を認めた。
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