研究実績の概要 |
本研究の目的は、CT画像を逐次近似法(Iterative Reconstruction; IR)で再構成した場合に、従来のフィルタ補正逆投影法(Filtered Back Projection; FBP)で再構成した画像と比較して診断能を低下させない範囲で、どの程度まで線量を低減できるかを検討することである。 平成27年度は前年の実験結果を元にして実際にファントムを作成し、撮影を行って診断能を検討した。多血性肝腫瘍を模した球体(径5mmまたは10mm)を特注にて作成し、これを肝実質を模した寒天(造影剤にてCT値を調整)の内部にランダムに配置した円筒状のファントムを30個作成し、CT装置で撮影した。撮影線量は通常臨床で使用する程度の線量とその75%、50%の線量の計3種類の線量で撮影し、それぞれFBP法で再構成した。75%、50%で撮影した画像はIR法でも再構成を行い、計5種類の画像(100% FBP, 75% FBP, 75% IR, 50% FBP, 50% IR)を各ファントムにつき作成した。これらの画像を2名の放射線科医が評価し、病変の有無と位置を診断した。JAFROC解析の手法を用い、5種類の画像間で診断能を比較検討した。 この結果、同じ線量(75%あるいは50%)間ではFBPとIRで診断能に差を認めなかった。また、50%の線量ではIR法を用いても、100%のFBP画像と比較して有意に診断能が低い結果となった。以上より、本研究で使用したCT装置ではIR法を用いても診断能の改善は期待できず、撮影線量を低下させると診断能の低下を招く可能性があることが示された。 本研究の結果は2016年の欧州腹部消化器放射線学会(ESGAR)で発表予定である。
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