研究課題
近年、次世代の高精度放射線治療として、強度変調放射線治療(IMRT)など線量率を可変させながらX 線照射を行い、総線量を積算する治療法が実施されているが、局所的超高線量X 線照射が生体に与える影響は不明な点が多い。本研究では大型放射光施設(SPring-8)から供給される放射光を用いてスリット幅25μm から数mm の高精細スリット状照射を多方向から組み合わせ腫瘍本体に超高線量を収束する照射法を開発し、難治悪性腫瘍に対する新たな治療戦略の基礎とすべく、腫瘍組織への反応・正常組織有害事象の両面から最適な照射線量やビーム幅等を検討した。正常組織への反応は、定位的固定が可能なマウスの脳を中心にビーム間隔を種々に変化させて検討し、半致死線量から耐容線量を推定した。また、ビーム間隔を広げるにつれて、耐容線量は増加し、より高線量の放射線を照射できる可能性が示唆された。腫瘍組織への反応は放射光施設(SPring-8)のマシンタイムの関係上十分な検討はできなかったが、本来、腫瘍細胞を根絶させることは難しいとされる非照射部位の存在するスリット状照射において、マウスに生着した腫瘍の縮小が観察され、腫瘍制御に効果があることが示されたと考えられる。今後は、正常組織と同様に最適な照射条件を検討し、臨床応用への基礎データとすることを目標とする。
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