小径腎癌における凍結療法の治療成績は比較的良好であるが、弱点としてheat-sink effectがある。腎門部など大きな血管近傍では血流により局所温度が上昇するために至適な凍結温度に至らず治療が不十分となりやすい。そこで、腎動脈を閉塞することでheat-sink effectを軽減できるのではないかと考えた。本研究では、動物実験を用いて、腎動脈閉塞下凍結療法の有効性及び安全性について検証した。その中で、種々の塞栓物質を用いた塞栓術による腎動脈閉塞法を比較し、より効果的で安全な方法を模索した。 3匹の正常豚の腎臓(6腎)を用いて、以下の動脈塞栓術併用下での凍結療法の検討を行った。①塞栓なし、②リピオドール+ゼラチンスポンジによる動脈塞栓、③無水エタノールによる動脈塞栓を行い、腎実質の凍結療法を施行した。凍結療法中に距離別の温度測定を行い各動脈塞栓術併用下凍結療法における温度変化を検討した。また、一部は凍結療法後にMRIを撮影し画像的な壊死範囲の検討を行った。凍結療法後には腎臓を摘出し病理学的検討を行った。以上の結果から無水エタノール、リピオドール+ゼラチンスポンジ、塞栓なしの順で凍結範囲が広がることが判明した。また、無水エタノールに関しては凍結範囲以外の正常腎実質にも高度な壊死を認めた。さらに追加の動物実験を予定していたが豚コレラにより追加実験を行うことができなくなった。現在データを解析し論文作成中である。
|