食道癌治療に対する強度変調放射線治療および画像誘導技術を用いた高精度放射線治療体系の構築を目指して、今年度は昨年度に引き続き、食道癌治療における最適な照射野のシミュレーションを中心に研究および論文作成を進めた。 食道癌に対する照射後の晩期有害事象の発症に関する検討において、心臓の有害事象による全生存率の低下が指摘されているが、強度変調放射線治療技術を用いて心臓への照射線量を出来るだけ低減すると、心臓疾患による死亡率低下も得られると報告されている。日本でも標的体積への照射線量を集中させ、かつ正常組織への高線量域を低減できる強度変調放射線治療を導入するべきと思われる。ただし、日本で発生の多い食道癌の部位は胸部中部食道であり、原発巣およびリンパ領域を含むと縦隔全体が照射範囲となるため、強度変調放射線治療のビーム作成には十分注意する必要がある。特に、放射線肺炎の発症の危険性が高まる肺野への低線量域は最も考慮するべきである。これらの問題はやはり照射野サイズが大きいためであり、出来るだけ照射野を狭くして効率よい照射をすることが必要である。そのために、自由呼吸下ではなく呼気停止下で食道の動きを出来るだけ制限して照射野を狭くする検討を行い、この研究に関しては論文投稿を済ませている。また、治療計画装置上での治療計画シミュレーションを続けて研究し、今年度は実際に食道癌への強度変調放射線治療を実践していくこととしている。
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