研究実績の概要 |
今年度は生体豚を用いてヒアルロン酸注入下肺凍結の動物実験を行なった。昨年度までに凍結針周囲の温度を正確に測定するために作成した熱電対を配置(凍結針から3, 5, 7, 9, 12, 18mmの位置)したアダプターを用いて、データロガーを用いて経時的に温度を測定した。ヒアルロン酸群は、1%ヒアルロン酸を事前に凍結針周囲に注入し、2 freeze (5-5分)の凍結をおこなった。コントロール群として、3 freeze cycles (3-5-5分)の凍結を行なった。Iceballのサイズは、計測した温度分布から概算した。それぞれの温度変化やiceballのサイズを比較した。 コントロール群と比較すると、ヒアルロン酸群では、1回目の凍結から急峻な温度低下がみられた。コントロール群とヒアルロン酸群のiceballのサイズは、1回目ではヒアルロン酸群で8.2 mm、コントロール群で5.9 mmであり、ヒアルロン酸群の方が大きかった。Iceball内の温度分布は、ヒアルロン酸群の1回目のものは、コントロール群での2回目以降のものと同程度であった。ヒアルロン酸注入により肺胞腔の空気を置換することで、1回目の凍結から大きなiceballを得ることができたと考えられた。最終的に得られるiceballのサイズは、ヒアルロン酸群で9.5 mmとコントロール群で10.1 mmと変わらなかったが、ヒアルロン酸群では比較的円形のiceballが得られていた。 この結果により、ヒアルロン酸注入により、最終的なiceballのサイズの拡大は得られないものの、凍結時間を短縮でき、さらに均一なiceballを得ることができることが示唆された。
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