研究課題/領域番号 |
26861017
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
塚田 実郎 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 訪問研究員 (50573276)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 油性造影剤 / リピオドール / 比重 / 組織内分布 |
研究実績の概要 |
油性造影剤の比重変化が組織内分布に与える影響を調べる目的で、比重の異なるリピオドールをブタ肝動脈から動注し、Cone-beam CT(CBCT)を用いて肝臓内分布を評価した。 血液より比重の高い「高比重リピオドール:HL」と、血液と同程度に調整された「等比重リピオドール:IL」を用意した。ブタ総肝動脈から造影CBCTを行い、腹・背側に分岐する血管を同定した。分岐直前から水溶性造影剤によるCBCTを撮影したのち、HLないしILの一方を分岐直前から段階的(2、3、4mlの3段階)に注入し、CBCTを撮影した。同様の実験を肝両葉、1日2頭4日間、合計16例施行した。解析ソフトウェアを用いて集積されたリピオドールを計測した。注入領域の体積差の影響を除外するため、腹・背側領域の体積を計測し、リピオドール集積率/体積(%)を算出した。データはWilcoxon順位和検定で比較し、p値0.05未満で統計学的有意差と判断した。 手技は全例成功したが、2例でデータ再構成障害による欠損が生じた。14例中7例にHLを、7例にILを注入した。2ml、3ml注入の結果、HLは背側に有意に多く分布し、ILは腹側に有意に多く分布した。(p < 0.01) 4ml注入の結果、HLは全例背側に分布したのに対し、ILは分布に有意差がみられなかった。(p = 0.277)リピオドール注入時のX線視認性はHLと比べ、ILで視認性が低下した。CBCTにおいてもILはCT値が低く、検出が困難であった。 HLは少量投与時から背側に多く集積され、注入量を増やしてもその傾向に変化はみられなかった。一方、ILは少量投与時には腹側に多く集積され、注入量増加後は腹側・背側両者に均一に分布するように集積した。この結果より、油性造影剤の比重を血液と同程度に調整することで、動脈から注入した際に、より均一な組織内分布を得られるとわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
比重に関する実験は予定通り終了したが、解析方法において信頼性のおける解析方法にたどり着くのに時間を要した。また平行して行っていた粘性度実験では粘性度低下を期待したシリコンオイルと油性造影剤との混合溶液は分離が早く実験に不適切であり、再考を要した。
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今後の研究の推進方策 |
比重に関する実験は予定通り終了したが、低・等比重造影剤のX線視認性が悪く、臨床応用に際して克服すべき課題であると考えられた。このため、X線透過性を改善する目的でタングステン粉末を加えたin vitro実験を次年度に行い、低・等比重造影剤の視認性と分布に与える影響を評価することとした。 また粘性度評価に関しては新たに氷酢酸を各種造影剤に混合した溶液を作成し、粘性度を比較する実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
比重に関する実験は予定通り終了し、油性造影剤の比重を血液と同程度に調整することにより、組織内分布の均一化が得られることが判明した。しかし、低・等比重造影剤のX線視認性が悪く、臨床応用に際して課題が残る結果となった。この問題解決のため、in vitroの追加実験が必要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
タングステン粉末を低・等比重造影剤に付与し、X線視認性の改善を図るとともに、その分布に差が生じるかどうかを評価するin vitro実験を計画している。 また粘性度評価に関してはシリコンオイルと油性造影剤との混合溶液は分離が早く実験に不適切であったため、新たに氷酢酸を各種造影剤に混合した溶液を作成し、粘性度を比較する実験を計画している。 今回の実験および次年度の予定実験で得られた結果に関しては、国内外での学会発表を予定している。
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