前年度までは油性造影剤(リピオドール)を腫瘍に対する動注療法で使用する上で、比重変化が生体内分布に与える影響を調べる目的でブタを使用し、比重の異なる2種類のリピオドールを肝動脈から動注し、Cone-beam CT(CBCT)を用いて肝臓内の分布を評価した。最終年度にはリピオドールのもう一つの臨床的使用方法である塞栓物質として使用する上で、n-butyl-2-cianoacrylate (NBCA)と混合したリピオドールの比重変化が生体内分布に当たる影響について調べた。ブタを使用し、比重の異なる2種類のリピオドールとNBCAを混合した液状塞栓物質を作成し、バルーン閉塞下に注入した際の腎臓内の分布をCBCTで評価した。10例のデータを採取し、解析用ソフトウェアを用いて、ブタ腎腹側および背側領域それぞれに集積されたリピオドールと、腹側および背側領域の造影される腎体積を計測し、リピオドール集積率/体積値を算出した。得られた2群のデータはWilcoxon順位和検定を用いて統計学的に比較し、p値は0.05未満で有意と判断した。 結果、高比重リピオドール/NBCAおよび低比重リピオドール/NBCAはいずれも5例中3例が腹側に多く集積し、分布に有意差がみられなかった。前年度までに行った実験では、高比重リピオドールと等比重リピオドールの動注後の肝臓内分布に相違がみられたのに対し、今回バルーンで血流を遮断した状態で行った液状塞栓物質を用いた実験では、両者の生体内分布に相違がみられなかった。これは血流遮断により塞栓物質が均一に注入されたことに起因したと考えられ、リピオドールを生体内で均一に注入する上で血流の影響は比重以上に大きなものであることが示唆された。ただし注入液が塞栓物質という性質上、血管に接触した時点でその場に留まり末梢まで到達しないことが本研究結果に対して影響を与えている可能性があった。
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