研究課題
本研究は高LET,低LET炭素イオン線照射と化学療法の同時併用時の腫瘍細胞における増感効果の有無を明らかにすることが目的である。計画している具体的な研究項目として、腫瘍細胞に対する高LETと低LET炭素イオン線照射時のシスプラチン併用の有無による生存率の差の解析である。子宮頸癌腫瘍細胞株(Hela細胞)に対して、炭素イオン線照射(放射線医学総合研究所にて照射実験が可能)を15KeV/μm、30KeV/μm、70KeV/μmと異なるLETで照射を行う。照射1時間前にシスプラチンを投与した細胞と投与しなかった細胞に対して、各LETの炭素イオン線照射を行い、colony assay法を用いて、生存割合を比較した。2Gyの炭素イオン線を照射した細胞で、15KeV/μmではシスプラチン併用群の生存率が35%、炭素イオン線単独の生存率が62%、30KeV/μmではシスプラチン併用群の生存率が16%、炭素イオン線単独の生存率が22%、70KeV/μmではシスプラチン併用群の生存率が8%、炭素イオン線単独の生存率が12%となった。15KeV/μmではシスプラチン併用群の生存率と炭素イオン線単独の生存率に有意差を認めた(p<0.005)が、30と70KeV/μmではシスプラチン併用群の生存率が低下する傾向はあるが有意差は認められなかった。これらの結果から低LETの炭素イオン線照射とシスプラチンの同時併用は増感効果の存在が示唆されたが、高LETの炭素イオン線照射とシスプラチンの同時併用は増感効果が存在しない可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
現在シスプラチン併用炭素イオン線照射における増感効果の解析を生存割合を評価項目として解析を進めており、臨床結果から推測された結果と同様に、低LETの炭素イオン線照射とシスプラチンの同時併用は増感効果の存在が示唆されたが、高LETの炭素イオン線照射とシスプラチンの同時併用は増感効果が存在しない可能性が示唆された。今後はそのメカニズムに関する研究を進めていく予定である。
現在、低LETおよび高LET炭素イオン線それぞれとシスプラチンの同時併用による増感効果の違いを免疫染色などを用いてメカニズムの解析を進めている。また異なる化学療法薬剤や細胞株を用いて、同様の研究を進めていく方針である。
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