研究課題
本研究は高LET,低LET炭素イオン線照射と化学療法の同時併用時の腫瘍細胞における増感効果の有無を明らかにすることが目的である。放射線医学総合研究所で行われている『局所進行子宮頸部腺癌に対する炭素イオン線治療と化学療法の同時併用療法』の臨床試験(1001)の途中段階の結果として、以前に行われた炭素イオン線治療単独の臨床試験の症例と腫瘍の最大径の縮小率を比較した結果、治療終了時点で腫瘍最大径の縮小率が化学療法併用症例で54%、単独の症例で29%であり、化学療法併用の症例で有意に縮小率が大きかった。(p=0.0098)またin vitroの研究では子宮頸癌腫瘍細胞株に対して、炭素イオン線照射を照射1時間前にシスプラチンを投与した細胞と投与しなかった細胞に対して15KeV/μm、30KeV/μm、70KeV/μmと異なるLETで照射をおこなった。各LETの2Gyの炭素イオン線を照射した細胞で、15KeV/μmではシスプラチン併用群の生存率が35%、炭素イオン線単独の生存率が62%、30KeV/μmではシスプラチン併用群の生存率が16%、炭素イオン線単独の生存率が22%、70KeV/μmではシスプラチン併用群の生存率が8%、炭素イオン線単独の生存率が12%となった。15KeV/μmではシスプラチン併用群の生存率と炭素イオン線単独の生存率に有意差を認めた(p<0.005)が、30と70KeV/μmではシスプラチン併用群の生存率が低下する傾向はあるが有意差は認められなかった。これらの結果から低LETの炭素イオン線照射とシスプラチンの同時併用は増感効果の存在が示唆され、高LETの炭素イオン線とシスプラチンの同時併用は増感効果が存在しない可能性が示唆された。
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巻: - ページ: -
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