研究課題
初年度は、慢性低灌流モデルマウスの脳障害を多角的に明らかにするための評価システムの立ち上げについて、大きく分けて3つの課題を遂行した。課題1:慢性低灌流モデルマウスの総頚動脈結紮前後の脳血流変化をレーザードップラー血流計で測定し、その時の脳血管ネットワークの立体構造変化を二光子励起レーザー顕微鏡で測定した。これにより慢性低灌流モデルの障害レベルを評価した。課題2:CCDカメラを用いた新規光イメージング装置を用いて正常マウスの脳機能を測定し、測定値の正確性の評価を行った。課題3:[11C]flumazenil(FMZ)-PET による慢性低灌流モデルマウスの神経細胞分布密度評価を行った。得られた研究成果を下記に記述する。課題1:慢性低灌流モデルマウスが脳卒中の疾患レベルの中の貧困灌流状態であることを証明した。本研究成果は、国際誌(J Cereb Blood Flow Metab. 2014; 34(8):1363-72.)に掲載された。課題2:CCDカメラを使った新規光イメージング装置で得られた覚醒マウスの脳血流動態と酸素代謝を測定値は、ヒトのPET測定値で得られた測定値と類似した結果となった。本研究成果は、国際誌(J Neurosci Methods. 2014; 30;237:9-15)に掲載され、昨年度の日本光学会(筑波)において招待講演を行い、日本脳循環代謝学会の最優秀ポスター賞を受賞した。課題3:[11C]flumazenil-PET と免疫染色法により慢性低灌流モデルマウスの神経細胞分布密度評価を行った結果、脳細胞密度の低下が見られなかった。一方で、レーザードップラー血流計による脳血流測定から脳機能障害が観察されている。この研究成果は、本年度の日本核医学会(東京)で報告する予定である。国際誌への年内の投稿を目指して準備中である。
1: 当初の計画以上に進展している
初年度の計画通り、慢性低灌流モデルマウスの脳障害レベルを多角的に測定するイメージングシステムの立ち上げが終了した。当初の計画に加えて、[11C]flumazenil(FMZ)-PETと光イメージングによる慢性低灌流モデルマウスの長期測定での研究成果が得られている。さらに、順調に論文成果が得られており、また、学会賞も受賞した。
当初に計画した以上の速度で研究が進んでいるため、次年度は、当初に予想した研究成果以上のものが得られるように積極的に研究テーマを発展させていきたい。特に、本研究の特徴としてPETと光イメージングの2つの測定系を組み合わせてマルチスケールに病態を観察していくことにある。その研究の方向性をさらに高めるために、PETと光イメージングの同時測定システムの開発に取り組む予定である。
予定よりも効率的(測定エラーによるやり直し等)に実験が行えたため、消耗品費が抑制されたために、予算の一部が残った。
予定よりも論文化の進み方が早いため、論文化のための英文校正や投稿料などの増加分に、昨年度の残った予算を充てる。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
J Neurosci Methods.
巻: 30 ページ: 9-15
10.1016/j.jneumeth.2014.08.022.
J Cereb Blood Flow Metab.
巻: 34 ページ: 1363-72
10.1038/jcbfm.2014.91.
巻: 34 ページ: 1761-1770
10.1038/jcbfm.2014.140.