炭素イオン線照射による転移抑制機構の解明を目的として、蛍光タンパク質を指標に血中遊走する癌細胞の数を測定した。具体的にはColon-26がん細胞より蛍光タンパク質を安定発現する細胞Colon-26pCherryPickerを樹立し、BALB/cマウスの大腿皮下に接種させ、7日後に形成した腫瘍に炭素イオン線を照射した。照射後5日目に、血中遊走するがん細胞数を測定した。イメージングサイトメーターを用いた解析の結果、非照射群では血中遊走するがん細胞が検出されたが、照射群では遊走するがん細胞は検出されなかった。この結果より、炭素イオン線照射後、血流で遊走するがん細胞数の減少が認められた。 また、LM8がん細胞を用いて、腫瘍局所への炭素イオン線照射により誘導される遠隔腫瘍からの転移抑制することに対する炭素イオン線以外の線質、光子線においても同様な効果が誘導されるのかを検証した。その結果、腫瘍増殖に影響がない低い線量の場合、遠隔腫瘍からの転移はγ線も炭素イオン線ともに、照射することにより抑制されなかった。一方、腫瘍の増殖遅延が認められる高い線量では、遠隔腫瘍からの転移は炭素イオン線とγ線同程度、顕著に抑制された。この結果より、炭素イオン線以外の放射線でも照射による遠隔腫瘍からの転移の抑制が誘導される。また、光子線も炭素イオン線ともに、低い線量照射による遠隔腫瘍からの転移の抑制が認められなかった。
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