研究課題/領域番号 |
26861031
|
研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
破入 正行 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 研究員 (80435552)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | PET / オリゴペプチド / 標識合成 |
研究実績の概要 |
今年度は標識部位としてTrp塩酸塩を含む腫瘍細胞浸透促進オリゴペプチド(Tumor-penetrating peptides) iRGD(CRGDKGPDC)の合成、標識化およびPET撮像を行った。さらにTrp 塩酸塩の代わりにCys塩酸塩、ヘテロ環を含むアミノ酸塩酸塩を用いた炭素11ホルムアルデヒドによるピクテスペングラー反応も検討した。Trp-iRGDと炭素11ホルムアルデヒドの反応を手合成で検討し中程度の転換率で得ることに成功した。さらに遠隔合成装置を用いた合成検討を行ったところ、合成時間の平均が35分、合成終了時の収率が4.2 ± 3.2% (n=3)、比放射能が75.7 ± 12.3 GBq/μmolであった。膵がん細胞であるBxPC3, MIAPaCa-2およびAsPC-1細胞を用いた胆癌マウスでのPET撮像を行ったところ、標識ペプチドは癌細胞に集積しなかった。Cys塩酸塩、ヘテロ環を含むアミノ酸塩酸塩を用いた炭素11ホルムアルデヒドによるピクテスペングラー反応も検討した。基質としてCys塩酸塩を用いたところ反応が進行し、[2- 11C]チオプロリンを得ることに成功した。また[2- 11C]チオプロリンを用いてPET撮像も行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
iRGD(CRGDKGPDC)の合成は固相法を用いたペプチド合成を行い調製した。さらにFmoc-TrpおよびFmoc-Tpiを導入後、脱保護次いで樹脂からの脱離を行い標品(Tpi-iRGD)と前駆体(Trp-iRGD)を調製した。次にTrp-iRGDと炭素11ホルムアルデヒドの反応を手合成で検討し中程度の転換率で得ることに成功した。さらに遠隔合成装置を用いた合成検討を行ったところ、合成時間の平均が35分、合成終了時の収率が4.2 ± 3.2% (n=3)、比放射能が75.7 ± 12.3 GBq/μmolであった。膵がん細胞であるBxPC3, MIAPaCa-2およびAsPC-1細胞を用いた胆癌マウスでのPET撮像を行ったところ、標識ペプチドは癌細胞に集積しなかった。Cys塩酸塩、ヘテロ環を含むアミノ酸塩酸塩を用いた炭素11ホルムアルデヒドによるピクテスペングラー反応も検討した。基質としてCys塩酸塩を用いたところ反応が進行し、[2- 11C]チオプロリンを得ることに成功した。また[2- 11C]チオプロリンを用いてPET撮像も行った。癌への集積は確認されたものの、肝臓で代謝されたため、多臓器との差異があまり大きくないこともわかった。
|
今後の研究の推進方策 |
標識位置が異なるiRGDの合成、標識化とPET撮像の検討を行う。標識部位としてiRGDのN末端ではなく、C末端側にLys残基およびその側鎖にTrpを導入したペプチド、および5残基目のLys側鎖にTrpを導入したiRGDペプチド誘導体を合成し、それらを標識する。これらのペプチドに関しても PET撮像を行い、N末端側で標識を行ったペプチドでの癌細胞の取り込みを比較することで細胞への取り込み機序の解明を行う。さらにコールド体の癌浸透性オリゴペプチドと標識化した癌浸透性オリゴペプチドを同時、またはコールド体の癌浸透性オリゴペプチドを事前投与することにより癌細胞に対する標識ペプチドの集積量の変化を評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入予定だったLC-MS用の備品が製造中止なり、またLC-MS自体も故障したため一部の実験が不可能となったためである。また予定よりも消耗品費が押さえられた。
|
次年度使用額の使用計画 |
購入予定であったLC-MS用の備品の代わりにHPLC用のPDAおよび解析ソフトなどを購入し、より詳細なHPLC解析を行う。また、多種多様な標識ペプチドを合成するために高純度な試薬およびガラス機具などを購入する。さらに成果を発信するため論文発表および学会に参加する費用に使う。
|