申請者は放射線で障害されたラット小腸上皮細胞と間葉系幹細胞(MSC)えお共培養させることで、IEC-6の細胞死を抑制できることを明らかにした。このMSCが分泌する治療効果を有する候補因子の中で、TrkB受容体を標的とするBrain-drived neurotrophic factor (BDNF)は、非常に効果的にIEC-6のアポトーシスを抑制した。BDNFはAKTやERKのリン酸化を誘導し、Bcl-2の発現増加やBax発現の低下を引き起こすこと、AKTやERKの経路の特異的阻害剤を用いることで、BDNFによるアポトーシス抑制効果は著しく低下することから、BDNFによる放射線防護効果が明らかとなった。BDNFを用いた治療法の開発として、申請者はMSCにBDNFを過剰発現させた株の作成に成功した。今後は放射線被ばく動物モデルにおけるBDNFの投与経路や投与形態を検討し、放射線腸管障害に対する治療法の開発を目指す。
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