研究実績の概要 |
本研究の目的は、CTを用いて造影MRIに類似した高いコントラスト画像を取得する新しい検査法を開発し、悪性腫瘍による骨浸潤の評価に応用することである。評価対象は1)口腔癌の下顎骨浸潤、2)頭頸部癌の頭蓋底浸潤、とした。今年度の研究成果の概要は以下の通りである。 1)臨床的に下顎骨浸潤が疑われた口腔癌(歯肉癌、口腔底癌、臼後部癌など)のうち、320列面検出器CT装置(320ADCT; Aquilion ONE, Toshiba)とMRI検査を受け、治療が施行された症例の画像情報を用い、画像解析を施行した。造影遅延相(造影開始後70秒)と造影超早期相(造影開始5秒)をサブトラクションし、既存の骨組織のみ除去しヨード造影増強のみを強調させた骨サブトラクション画像を作成した(N=107例)。時相の違いによる動きのアーチファクトやズレに対しては、Workstation上で補正アプリケーションを使用した。その結果、通常の軟部条件画像、骨条件画像と同時に、骨サブトラクション画像で評価することで、骨皮質の破壊像の評価と共に、骨髄内の腫瘍浸潤を描出することが可能となり、下顎骨浸潤評価に有用である可能性が示唆された。しかしながら動きの補正が不十分であった症例や、口腔内金属アーチファクトで評価が難しい症例もみられた。本年度はCTによる本手法とMRI画像を用いた下顎骨浸潤の診断基準を構築し、読影実験の前準備を行った。 2)頭蓋底に隣接した頭頸部癌(鼻副鼻腔癌、上咽頭癌)に対して、同様に画像解析を行い、骨サブトラクション画像を作成した(N=50例)。探索的な検討ではあるが、頭蓋底浸潤を認めた症例のほぼ全てにおいて、頭蓋底破壊像だけでなく、浸透性の頭蓋底浸潤や神経周囲進展に関しても描出することが可能であることが示唆された。今後はMRIとの診断能に対する比較検討を行う予定である。
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