本研究の目的は網内系組織(肝臓、脾臓)より排出される新規リガンドの開発である。放射性核種封入リポソームは、腫瘍に集積する一方、網内系組織にも集積する。そこで本研究では、リポソーム内に封入するリガンドの性質に着目し、網内系組織においてリポソームが分解された際、細胞外に効率的に排出されるリガンドの検討、及び作製を行った。 まず、新規リガンドの一部となるIn-111 DOTAとIn-111 DTPA、並びに網内系クリアランスが確認されているIn-111 ECの各封入リポソームの体内分布を複数のマウス腫瘍皮下移植モデルで検討し、さらに、肝臓内のリポソームの状態をHPLCで解析した。この結果、マウス種差により肝臓内リポソームの分解能に違いが認められ、網内系クリアランスの達成には、網内系組織によるリポソームの処理能力が重要であることが分かった。 この結果をもとに、治療実験を考慮したヒト腫瘍皮下移植マウスモデルの確立を行った。まず、複数のヒト腫瘍BALB/c-nu/nuマウス皮下移植モデルに対し、In-111 ECもしくはIn-111 DTPAを封入したPEG修飾リポソームの体内動態をSPECT/CT装置により画像解析した。さらに、網内系組織においてリポソームが分解されたあと、In-111 ECが組織から迅速に尿排泄される条件を検討し、新規リガンドの有用性を判断する基準を設定した。 また、本研究課題中に作成したプライオリティー・リストをもとに、新規リガンドの作製を行った。新規リガンドについては、リガンドのデザイン、合成反応の条件、HPLCによる合成評価の条件等を検討し、HPLCによる精製が可能となった。新規リガンドを封入したリポソームは上記のマウスモデルを使用し、腫瘍集積と網内系クリアランスについて評価を進めている。
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