研究課題
近年、画像診断技術の進歩によって、統合失調症の脳局所の構造や機能に関する病態が明らかにされつつある。これらの知見を受け、脳形態画像情報から精神疾患と健常者を判別する手法についての研究も報告されるようになっており、申請者も健常者と統合失調症患者の判別分析や大うつ病性障害患者と統合失調症患者を対象とした判別分析法を確立している。また非侵襲的な手法である、MRIによるな血流測定検査による疾患特異的な機能変化を検討した報告もある。申請者もこれまでに統合失調症における局所脳血流変化を明らかにしており、また健常者、統合失調症患者、大うつ病性障害患者における血流変化パターンの差異を明らかにしている。また統合失調症患者、双極性障害患者、健常者おける局所脳血流ー脳室内温度調整機能の変化も明らかにしている。またポジトロン断層法(PET)による神経伝達物質の受容体密度測定も、形態画像としての意味合いに加え神経伝達物質の放出量測定といった機能画像としての使用が可能である。これまでに行われた統合失調症のドーパミン作動性神経の異常に焦点をあてた研究では、アンフェタミンなどの中枢刺激薬負荷時に統合失調症群では健常群と比較して線条体でのドーパミンの放出量が増加していたという所見がある。この放出量増大は統合失調症の重症度とも相関するとされ、まさに統合失調症のドーパミン過剰仮説を支持する重要な所見として注目されてきた。申請者はこれまでに統合失調症モデルラットに対してメチルフェニデート負荷試験を行い、モデルラットにおけるドーパミン放出量の増大を明らかにした。またマーモセットを対象としたメチルフェニデート負荷試験も行っており、そのメチルフェニデートによるドーパミン放出量の増大も確認している。
1: 当初の計画以上に進展している
平成26年度には健常の成体マーモセット、およびメタンフェタミンの連日投与によりメチルフェニデートに交差感作させた統合失調症モデルマーモセット各4頭に対してメチルフェニデートの単回投与前後で[18F]fallyprideを用いたPET検査を行い、メチルフェニデートによる中枢刺激による反応をin vivoで検討した。また健常者、統合失調症患者、大うつ病患者や双極性障害を対象としたDTIやASLなどのMRI画像の画像収集はすでに数多く行われている。
当初の計画通り、今後は形態画像と機能画像を組み合わせたmulti modalityによる精神疾患の判別分析法の確立を行うほか、重症度や治療に伴う経時的な変化や、 ankyrin 3などの原因遺伝子と目されている遺伝子の多型と大脳表現系との関連を検討していく予定である。
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