脳画像技術の発展に伴い、精神科疾患においても大脳皮質容量測定や神経連絡を測定する拡散テンソル画像などの手法が研究に応用されるようになった。またpositron emission tomography (PET)は統合失調症および統合失調症モデル動物における特徴的な脳変化を明らかにした。しかしこれらの検討はそれぞれの画像技術を別々に用いたものが多く、統合的な研究は少ない。本研究は最新の脳画像医学およびシステム神経科学の知識に基づきこれらの技術を統合的に用いた。 平成27年度には、統合失調症で多くみられる自閉症スペクトラム障害様症状と関連のある大脳局所領域を、3次元T1強調画像を用いたvoxel-based morphometry法により検討した。その結果、対人応答性尺度成人版の総得点と左上後側頭回との間に有意な負の相関を認めた。対人応答性尺度成人版の下位分類との検討を行った結果、social communication and interactionと左上後側頭回との間に有意な負の相関を認めたが、自閉的行動スコアとの間には相関が認められなかった。左上後側頭回は言語理解、特に比喩を含めた言語理解に関連している領域であり、これまでに明らかとなっている、自閉症患者における同部位の障害と同様、統合失調症でも左上後側頭回の障害が明らかになった。また、健常群を対象に自閉症スペクトラム障害様症状と大脳局所血流量の相関解析を検討およびfunctional network解析も行なった。その結果、SRS-Aのスコアと後部帯状回の血流量との間に正の相関が明らかとなった。また、低SRS-A群では帯状回などのbetweenessが増加していることが明らかになった。これらの結果から、SRS-Aのスコアが高い人ほど帯状回と内側前頭前野の機能的結合が低いために過活動しているのではないかと推測された。
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